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東レ滋賀事業場 大津市園山

超極細繊維を仕上げる 精密な構造、独自の工夫で
超極細繊維を使った織物が染め上がる。きめ細かい表面には光沢感が広がる(大津市園山=写真上)
超極細繊維トレシーを使っためがねふき(写真下)
 東レは1926(大正15)年1月、「化学繊維の時代」到来を予見した三井物産の役員有志が設立した。滋賀事業場こそがその発祥地にあたる。「東レの歴史はそのまま滋賀事業場の歴史です」と総務課の三好邦之主任は胸を張る。

 東レの国内12工場では最大規模で、広さは阪神甲子園球場21個分になるという。生産品目は各種合成繊維から、燃料電池の電極材料になる炭素繊維、液晶ディスプレー用カラーフィルターなどの電子情報材料まで数千種類に及ぶ。多くは工業用だが、コンタクトレンズ「ブレスオー」や家庭用浄水器「トレビーノ」など一般向け製品も数多く手がける。

 超極細繊維素材「トレシー」は、一般向けの主力商品の一つ。高性能クリーナーとして、めがねふき用途でトップシェアを誇る。

 めがねなどに着いたわずかな汚れをふきとることができる秘密は、直径2マイクロメートルの繊維が重なり合う精密な構造にある。繊維の間にできた空間に皮脂などの細かい汚れを収納する仕組みになっている。

 本来、マイクロメートル単位の繊維の製織は困難とされてきた。だが2マイクロメートルの繊維約200本からなる同30マイクロメートルの束を使ってとりあえず織物や編み物を作り、後から200本をばらばらにするという工夫で可能にした。

 滋賀事業場は、この束をより細かい繊維に分け、最終的に製品化するまでの工程を一手に引き受けている。東レの別工場から運び入れた幅1・5メートルの素材を数百メートルの長さにつなぎ合わせて輪状にする。そのまま長さ約10メートルの大型機械の中に入れ、特殊な薬品を混ぜる。白い布が約1時間、ぐるぐると機械の中を20−30周回転する。ここで繊維の束の不要な樹脂部分が溶解し、2マイクロメートルの細い繊維だけが残ってばらける。

 搬入時にはごわごわとしていた繊維の表面が、機械から出てくるとツルツルとした状態に変化する。一本一本の繊維が細かくなったことで光沢感さえあり、まったく見違える。

 染色後は作業員が水しぶきを浴びながら機械から繊維を取り出し、台車に収納する。その後高温をかけながら用途に合わせた力で引き伸ばす。「製品が機械や作業員の手の汚れなどをふきとってしまうこともあるので取り扱いに注意しています」とトレシー生産課のベテラン松井英樹さん(56)。最後は専門の検査員が厳しく出来栄えを調べて出荷する。

 アメニティー製品生産部の山本信一部長は「近年はめがねふきなど家庭用だけでなく、電子情報機器の生産工程などへも用途が広がっている。顧客の品質管理にも影響が出るため、より品質を高めたい」と話す。

 操業開始から丸80年。「新しい価値の創造を通じて社会に貢献する」というものづくりの理念は、東レの原点で今も脈々と受け継がれている。

[2007年10月28日掲載]
東レ滋賀事業場
 東レ設立翌年の1927年8月にレーヨンから生産開始した。敷地面積約86万平方メートル。従業員約4000人。研究開発施設があり、新規製品を立ち上げるマザー工場機能も持つ。