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川島織物セルコン市原事業所(京都市左京区静市市原町)

つづれ織りに熟練の技 美術工芸製品手作業多く
2006年9月に国立劇場に納入した小劇場用の緞帳(=写真上=)
つづれ織りの緞帳が製作されている長大な織機(京都市左京区・川島織物セルコン市原事業所)
 雪景色に囲まれた洛北の工場内で、幅24・2メートルに及ぶ長大な織機の前に、いすに腰掛けた数人のベテラン従業員が横に並び、黙々とたて糸によこ糸を通す。劇場や会館の大空間を彩る華麗な舞台幕「緞帳(どんちょう)」の製作現場。緞帳のよこ糸は、5、6本の糸を束ねて毛糸ほどの太さにするものもあり、スケールの大きさを感じさせる。

 川島織物セルコンが製作するつづれ織りの緞帳は、昭和20年代半ばから半世紀かけて積み重ねてきた高い技術力で、国立劇場(東京都)や南座(京都市)などへの納入実績を誇る。市原事業所(京都市左京区)は、グループ会社を含む国内外15の生産拠点で唯一、美術工芸品の緞帳や祭礼幕を製造している。

 緞帳の糸は、レーヨンなどが中心で、金、銀糸など一部を除いて自社で染めている。使用する糸が少量多種で、色落ちに対する強さも求められるためだ。原画は、著名な作家の作品や自社で手掛けたりとさまざまだが、「原画の良さを織物ならではの立体感や奥行き、質感でどのように表現するかがポイント」と身装・美術工芸事業部の明石文雄技術顧問(60)は説明する。

 製作期間は、デザインの打ち合わせなども含めて約1年かかる場合が多いが、半年ほどで納品することもあるという。つづれ織りは、柄の境目でよこ糸を織り返すため、柄や色の違いをはっきりさせて仕上げられるが、機械化が難しく、熟練した従業員を確保する必要もあるため、コストは高くなる。「高価なだけに技術力が求められる」と、明石技術顧問は強調する。

 市原事業所は44年前、生産能力を拡充するために開設された。現在、カーテンを中心とするインテリア向けの織り工程は機械化が進み、作業場には自動化された織機の音が響き渡る。2007年3月期で約11万8000メートルの長さを生産したという。

 一方、身装や美術工芸製品の工程では、今も手作業が多い。帯や祭礼用衣装には、長年培ってきたつづれ織りや紋織りの確かな技術が生かされている。また、山車に使われている祭礼幕などの修復も手掛けている。あせてしまった色を確認するために、当時の色が残るわずか1、2ミリの糸を探し出すほど、復元には緻密(ちみつ)な作業が求められる。

 緞帳の生産量は、最盛期で年間約6000平方メートルに上ったが、バブル崩壊の数年後から減少傾向にあり、現在は約1500平方メートルほどになっている。明石技術顧問は「長い不況で緞帳を使うような施設の建設が減った。特に自治体からの受注は厳しい状況にある」と話すが、「緞帳はつづれ織りに代表される創業以来の織物技術を発揮する製品であり、守り続けたい」と力を込める。

[2008年2月24日掲載]
川島織物セルコン市原事業所
 1964年9月開設。敷地面積約5万4300平方メートル、建物は延べ床面積約2万6千平方メートル。生産設備のほか、本社機能を備える。従業員約300人。身装・美術工芸品の生産高は2007年3月期で11億2千万円。叡山電鉄市原駅の南西約500メートル。