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季節ごとの非日常、演出

料理旅館「白梅」女将 奥田朋子さん
料理旅館「白梅」女将 奥田朋子さん
料理旅館「白梅」女将 奥田朋子さん

 石畳の小道で柳が揺れる祇園の白川沿い。梅の古木を両側に配した橋向こうの料理旅館「白梅」を切り盛りする。

 凛とした和服の所作で客を出迎え、電話応対から配膳まで従業員と一緒に行う。観光シーズンは全6室が半年前から予約で埋まる。「小さな旅館だからこそ、お客さまに細やかな心遣いができる。笑顔で帰って頂きたい」と話す。

 客の状況や季節に合わせ、料理や調度品を替える。結婚記念などお祝いの旅行なら金箔(きんぱく)入りの酒、赤飯を出す。客室の掛け軸も、3月初めはワラビやゼンマイなど早春の野草の書画を、後半は桜に掛け替える。「自宅のようでいて非日常の空間と、日本文化の魅力を味わってほしい」と、日々気を配る。

 中学、高校生の時は旅館を継ぐ意志はなく、将来の夢は獣医師。週末は乗馬クラブに通った。当時は「生活の決まり事の多い京都から出たかった」といい、兵庫県の大学へ。卒業後は先代の女将だった母親の反対を押し切り、客室乗務員の道に進んだ。

 国際線の乗務は、長時間動き続ける厳しい仕事だった。その一方、「お客様の求めるサービスをくみ取る感覚を学んだ」。旅行客に現地の詳しい情報を案内し、ビジネス客には簡潔な言葉で要望に応えるよう心掛けた。

 仕事を通じ、他国にない日本文化の素晴らしさにも気付いた。外国の友人と比べ、自国の歴史や習慣を知らない自分も知り、京都へ戻る気持ちが芽生えてきた。

 責任者への昇格を前に30歳で帰郷、女将を継いだ。母親やベテラン従業員から着物の着付けや客に落ち着いてもらえる接し方を教わった。「機上も旅館も一緒。空気を読み、心からの言葉で伝わる」

 常連客の世代は幅広い。若い頃から宿泊に訪れていた男女が結婚し、子どもに旅館名の「白梅」と名付けたこともある。外国人の客も増えた。「遠方から再訪して頂けるとまた、頑張ろうと思えます」

おくだ・ともこ 堀川高、関西学院大社会学部を卒業。退職後、30歳の時に結婚。趣味はお菓子作り。仕事の合間、季節の素材で和洋問わず調理し、お客に提供することも。京都市東山区出身。下京区で父と夫、長男、長女の5人暮らし。48歳。

【2014年03月02日掲載】