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モノづくりの精神 若者らに継承を

滋賀経済産業協会会長 廣瀬一輝さん
「モノづくりの歴史を掘り起こし、若い世代に伝えたい」と話す廣瀬会長
 滋賀県内の製造業を中心とした中小企業が集まる滋賀経済産業協会が、顧客中心の経営や技能伝承、若い世代の育成などに取り組んでいる。景気が好転する中でも、グローバル化した競争や少子高齢化はさらに進展し、県内中小企業の置かれた厳しい状況は変わらない。5月に会長に就任した廣瀬一輝氏に、今後の抱負や県内中小企業を取り巻く現状などについて聞いた。

 −同協会の第2代会長に就任しての抱負は。

 「滋賀経済産業協会は、モノづくりの滋賀工業会と、人づくりの滋賀経営者協会が合併して誕生した。まもなく発足3年を迎えるが、この両組織がさらに相乗効果を出せるようにしたい。少子高齢化や、2007年問題に象徴される技能伝承の問題、フリーターやニートなど若年労働者の問題、いずれも中小企業にとっては重大だ。社会的な構造変化の中にあっても、信念を持ってモノづくり、人づくり、業(わざ)づくりに取り組みたい」

 −景気回復の一方で、原油や原材料の高値が続いている。県内の経済状況をどう見ているか。

 「滋賀の経済状況は、決して悪くない。細かく見れば、一部の業種や企業には苦労しているところもあるが、有効求人倍率も高く、その他の経済指標もいい。全般的には好調だと言える。自動車関連の工場の集積も進んでおり、今後、産業としての観光が県内で盛り上がれば、県の産業バランスがより良くなるのではないか」

 −県内への工場進出が堅調だが、大手企業の工場と地元中小企業との関係は。

 「これまで、滋賀には大手を中心に多くの工場が誘致されてきたが、地元企業とのつながりが少ないのが現状だ。大手の工場は、県外のみならず海外から資材や部品を調達し、下請けを発注しており、地元企業にメリットが少ない。滋賀の中小企業は、技術力のある企業が多く、役に立つはずだ。福井や石川など、大手の工場と中小企業の連携に力を入れている県もある。滋賀県も単に工場を誘致するだけでなく、地元企業と工場との連携に取り組んでほしい」

 −小中学生対象のモノづくり講習会や工業高校との連携など、最近若い世代に対する取り組みを強化している狙いは。

 「今、モノづくりの歴史を知らない人が、特に若者の間で増えている。例えば、彦根のバルブ産業の原点は、刀やかぶとなどの武具を作る職人だ。彼らは江戸時代になって仏壇を作るようになり、さらに明治時代に繊維産業が盛んになると、外国製のボイラーを修理し、それが彦根のバルブ産業のきっかけとなった。モノづくりの歴史を掘り起こし、次の世代に伝えることで、若い人たちに地域や将来に誇りや夢を持ってもらえるのではないか」

■ひろせ・かずてる 日本大理工学部卒。1966年、廣瀬バルブ工業入社、専務などを経て85年から社長。2003年10月から滋賀経済産業協会副会長、今年5月に同協会会長に就任。滋賀バルブ協同組合理事長も務める。彦根市出身。66歳。

[2006年8月21日掲載]