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小型の入門的商品 技術の応用展開探る

彦根仏壇事業協同組合 寺村勇理事長
「仏壇の七職の技術それぞれは優れている。応用展開をはかり、技術を絶やさないようにしたい」と話す寺村勇理事長
 経済産業大臣の伝統的工芸品にも指定されている彦根仏壇。江戸時代から続く滋賀を代表する伝統産業の一つだが、生活スタイルの変化などで、近年厳しい状況が続いている。産地活性化の方策はあるのか。今年5月に彦根仏壇事業協同組合の理事長に就任した寺村勇氏(55)に聞いた。

 −12年ぶりの理事長交代で就任した感想は。

 「責任の重さを痛感している。副理事長時代は、比較的伸び伸びとさせてもらったが、これからは規模も従業員数も違う組合員や、仏壇製造の各工程を分業する工部7職をまとめていかなければならない。これまでは、産地の中でも比較的大手のメーカーが理事長を務めていたが、今回私が引き受けることで、中小や個人の組合員のバランスも取りながら、やる気のある組合員がさらに伸びるように事業に取り組んでいきたい」

 −歴史ある彦根仏壇だが、近年厳しい状況が続いている。

 「最大の要因は、生活スタイルの変化だ。モデルルームを見学すると、近年の住宅には仏間がない。そこで、洋間でも違和感なく置いてもらえるよう家具調の仏壇にシフトしたものの、最近はウオークインクロゼットなどで住宅に家具さえ置かなくなってきた。今の住宅は寿命が30年と言われるが、その30年の家に何代も受け継ぐ仏壇を置こうという気になるだろうか。彦根市内の小学生でも、仏壇を見たことがないという子がいるのは残念だ」

 −打開策はあるか。

 「どんな家にでも合う仏壇を作り出すことだ。特に、彦根は比較的大型の仏壇が多いので、小型の仏壇はまだ研究の余地がある。仏壇を置く習慣のなかった人には、とりあえず小型の入門的な商品が必要だ。その一方で、職人の手仕事の良さを知ってもらう工夫を考えたい。技術の素晴らしさや価値を理解してもらえれば、相応の価格にも納得し、愛着を持って長く使ってもらえるのではないか」

 −その職人たちも、高齢化や後継者不足が深刻化している。どうやって技術継承するのか。

 「職人の後継者不足は深刻だ。多くの職人の跡継ぎは、他の仕事に就いており、若い人が入ってくるのは5年に一人くらいだ。仏壇が売れていれば、脱サラしたり定年退職後に職人になる人もいるだろうが、その場合でも、ある程度仕事の量がないと、技術を段階を踏んで教えることもできない。ただ、飾り金具や彫刻だけでは、売り物にならなくても、それぞれの技術は優れている。他に応用展開できるのではないか。その可能性を今後探っていきたい。ジレンマはあるが、技術を絶やさないためにも、我慢しながら続けなければ」

■てらむら・いさむ 京都産業大卒。1975年、大学卒業と同時に家業の仏壇製造販売業に従事し、現在は寺村仏壇店代表。94年2月伝統工芸士(漆塗部門)認定。彦根仏壇事業協同組合では理事、副理事長を経て、2007年5月に理事長に就任。55歳。彦根市出身。

[2007年9月9日掲載]