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下請けにも世界の波 中小企業に厳しさ増す

第1部 いざなぎ超え近景(1)
大手を支える下請け企業。素材高が利益を圧迫するが、価格転嫁は認めてもらえない(城陽市久世荒内・津島鉄工所)
 「仕事は増えたが、波は激しい。加工賃もなかなか上がらない」。精密板金加工の津島鉄工所(城陽市久世荒内)。この道一筋三十年の職人山本勝さん(五七)は、金属を直角に曲げる熟練技の加工作業を黙々と続けながら現場の感触を話した。
 同社は、関西の大手家電メーカーの孫請けとして、主に生産設備向け部品を製造する。二〇〇二年二月に始まった景気拡大で、一昨年からようやく受注が本格回復。出荷する製品は、毎月三千−四千種類にも上る。社員は膨大な設計図を基に、切削や溶接などの複雑な加工をこなす。
 「発注元の大手に振り回される」(津嶋義彦常務)構図は、いまも変わらない。昨年後半から納入先の電機大手が設備投資を抑制したため、年明けから受注が足踏み状態となり二月の受注は前月比で約二割減少。今期の売上高は、前期より約一億円少ない四億円程度にとどまる見通しだ。
 追い打ちをかけるように、材料価格の高騰が深刻化している。一年前はキロ当たり千円以下だったステンレス材料が現在は千五百−二千円に跳ね上がった。素材高は利益を約一割圧迫するが、取引先は価格転嫁を認めない。「利益がどんどん減る。これで本当に景気がいいと言えるのだろうか」。営業担当者が首をかしげる。
 これら下請けの上層に位置する大手企業。京セラやオムロン、日本電産など地元の上場会社も過去最高水準の業績が相次ぐ。部品調達先の裾野が広い島津製作所の〇七年三月期決算は、五期連続の増収増益で過去最高益を更新する見込みだ。
 本社三条工場(京都市中京区)では、一月に分析計測機器工場が本格稼働した。鉄骨四階建て延べ二万千七百平方メートル。三十五億円を投じた真新しい建物が異彩を放つ。
 この工場は、京都のものづくりを守る象徴的存在であると同時に改革の拠点でもある。「協力会社にも力をつけてもらい、相乗効果を発揮しなければ世界市場で生き残れない」(服部重彦社長)として、部品の調達先にも厳しい対応を迫る。
 組み立てラインの横に並ぶ部品置き場。中小企業から調達するネジや鉄板などは、毎日ほぼ一定量に調整されている。適量の部品を常備することで、部品在庫の圧縮や顧客への納期短縮を進め、部品の量をバーコードなどで徹底管理する。調達先の中小企業は、連絡が入ればすぐに適量の部品を用意する。
 協力会社約百社でつくる島津協力会の小林祥一会長(日本電気化学会長)は「これからは技術力を上げないと仕事はもらえない」と言い切る。
 下請けの納期や品質を厳しく管理し、ランク付けする京都の大手メーカーもある。不良品は問題外。等級が下がると懇親会にも参加できない。世界市場で戦う大手とその製品を陰で支える中小企業。景気が拡大すればするほど、両者の緊張関係は増すばかりにも見える。
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 五年を超える緩やかな景気拡大が続いている。大手企業の業績が堅調な半面、中小・零細企業の多くは依然、厳しい経営環境の中にある。規制緩和の影の部分も表面化してきた。雇用や給与への波及が遅れ、個人消費も回復の足取りが重い。地域経済の現場から戦後最長景気の断面をリポートする。=5回連載予定。
【2007年3月21日掲載】