京都新聞TOP > 経済特集アーカイブ > 最長景気の断面
インデックス

免許制撤廃で波紋 体力勝負の値下げ競争

第1部 いざなぎ超え近景(3)
規制緩和対策として輸送協力会が始めた共同配送(京都市下京区・京都市中央卸売市場)
 京都市内とその周辺のコンビニへの配達業務を受け持つトラック運転手(四三)=宇治市=は自称「景気回復とは無縁の身の上」だ。「四年前の手取り月給は二十六万円前後。配送先が増え、仕事が厳しくなったいまも変わらん」。午前六時四十五分から午後六時まで約十五店舗に弁当などを運ぶ。正社員だが給与は出勤日数に応じて出るため、週一日の公休以外はほとんど出勤。「年齢的に難しいが、転職も考えてしまう」と将来への不安を口にした。
 トラック運送事業は、一九九〇年に免許制から許可制に変わり、二〇〇三年には営業区域制限も撤廃。全国で年間二千五百社前後が参入し千社前後が廃業する激しい競争を続けながら、業者数は増え「過当競争」の悲鳴が上がる。その実態は、新規参入業者が運賃値下げで仕事獲得を目指し、既存業者も値下げで対抗するという体力勝負の値下げ競争の世界だ。
 京都府トラック協会が〇六年四月から〇七年二月にかけて府内約五百業者を対象に実施した調査によると、34%が健康保険・厚生年金保険未加入、50%が乗務員への安全確保指導を行っていない。「値下げ以外に力をさく余裕はない」(業界関係者)のが現状で、そのしわ寄せが運転手を直撃している。。
 また、物流業界は取引先業界の規制緩和の影響も受ける。スーパーでは大型店の出店規制緩和などに伴い競争が激化、コスト削減に躍起となっている。運送業者としては高止まりする燃料費の価格転嫁をしたいところだが簡単には進まない。
 京都市中央卸売市場から市内のスーパーに生鮮食品を配送する下京区の運送会社社長(四一)は「荷主の経営が悪くなればこちらの売り上げにも響く」とこぼす。値上げできない分、取引先に配送ルートや混載などコスト削減策を提案し共存共栄の道を探る。また、同市場指定業者でつくる輸送協力会も〇三年から共同配送事業を始めるなど効率化を目指している。
 一方、昨年九月に免許取得の規制が完全撤廃された酒販業界。スーパーやコンビニなどでの酒類販売拡大が既存店を圧迫している。京都市右京区の小林商店の四代目、小林招一さん(四〇)が営む酒店では、三十年前の最盛期から売り上げが半分以下に減った。各戸に配達する商店の利点も、遍在するコンビニにはかなわない。
 土日祝日の開店、平日午後九時半までの営業などさまざまに工夫を凝らしたが売り上げ減少は止まらない。小林さんは「量販店ではうちの仕入れ値より安い商品もあった。とても勝とうとは思わない。何とか生き残って食べていければ」と嘆く。
 消費者の利便性を高めて、新たなビジネスチャンスを生んできたはずの規制緩和の影の部分が、中小零細業者を追い詰めている。地域を支えてきた物流業者や小売店の疲弊感は高まるばかりだ。
【2007年3月23日掲載】