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百貨店にも再編の影 付加価値に商店街活路

第1部 いざなぎ超え近景(5・完)
大型店やチェーン店に押されて厳しい西新道錦会商店街の個人商店。配達などきめ細かなサービス強化で活路を見い出す(京都市下京区)
 二月二十八日夜、近鉄百貨店京都店(京都市下京区)で八十七年間の歴史を締めくくる閉店シャッターが降り始めると、涙がこらえきれなくなった。副店長の内山賢治さん(五五)は、前身の「丸物」時代を含めて三十一年間勤務。「十年間の店舗のすう勢を考えれば、仕方ない」と自分に言い聞かせたが、悔しさや寂しさが胸に押し寄せた。
 近鉄百貨店傘下で再起を期した京都店は二〇〇〇年、百貨店の売り場の半分を割き、衣料店や家電など量販店を組み込んで再出発した。「思い切った店舗構成で、若者やファミリー層などを呼び込みたかった」と内山さんは振り返る。
 商業環境は激変していた。目と鼻の先の京都駅ビルで開業したジェイアール京都伊勢丹に続き、商圏の京都市や京都府南部では、ショッピングセンターやホームセンター、衣料などの専門店も次々と出店。一方、企業の業績回復は所得増加に結びつかず、個人消費はマイナス基調のまま。
 全国の百貨店売上高は既存店ベースで、〇六年まで十年続けて前年割れと低迷。京都店では来店客が以前の一・五倍の二−三万人と安定的な数字に落ち着いた一方で一人当たり客単価は半減し、新たな挑戦も裏目に出た。内山さんは「大丸と松坂屋の経営統合さえ、もはや自然な成り行きなのでしょう」と肩を落とす。
 個人商店はさらに苦しい状況だ。京都市の商業統計資料によると、景気拡大の始まった二〇〇二年から二年間で、市内の売り場面積は約七万平方メートル増えたが、事業所数は約六百三十店減少。個人消費が落ち込む中、大型化したスーパー、店舗網を広げた専門店チェーンに対し、個人商店の多い商店街でシャッター通りが広がる構図だ。
 西新道錦会商店街(下京区)にある米屋の三代目、乙脇栄仁さん(四〇)は軽四自動車を駆り、冬場にも一日十軒前後の民家を巡る。米を届けた先で、一人暮らしのお年寄りや主婦らと雑談に興じ、地域に根を下ろした商店街の強みを生かしてご用聞きとして注文にもつなげる。家業を継いでこの十二年間に売り上げは半減したが、「顔と顔の見える関係が重視される配達業務に活路を見いだしたい」と力を込める。
 同商店街振興組合理事長の安藤宣夫さん(六八)は、消費者の意識の変化に注意を向けている。
 同商店街は、先進的な取り組みとして、決済カード発行事業「エプロンカード」を一九九二年から実施。発行枚数約六千枚、決済金額約四億円。事業などを通じて消費動向を分析する中で、価格でなく商品やサービスの質を重視した消費行動を取る人が増えている。
 ますます進む高齢化、個人のこだわりにお金をかける団塊世代のリタイアと、消費者も移ろい変わる。こだわりある品ぞろえやきめ細かなサービスは商店街の強みでもある。「ビジョンを持って、商店街再生の道を切り開きたい」。安藤さんは低迷する個人消費の向こう側を見据えている。=おわり
【2007年3月25日掲載】