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対価 同じ仕事 大きな格差

第2部 ひずむ雇用(2)
後輩のパートに仕事を教える小山さん。正社員になり、指導にも熱がこもる(近江八幡市の平和堂アル・プラザ近江八幡)
 小山幸代さん(33)=草津市=は23日の土曜日、給与明細を受け取ると、すぐに開いて見た。平和堂に勤めて12年、正社員として初めての給料。支給額の欄を見て思わず笑みがこぼれた。
 パートで入社し、7年前に能力を買われて店舗の総務主任に昇格した。それでも立場はパート。同僚には「店長になりたい」と話したが、その当時は夢でしかなかった。
 夢が目標になったのは昨年5月のこと。会社がパートの正社員登用制度を導入した。今年の試験に応募し、1度で合格した。「40歳までに次長、それから店長に」。がんばりが報われると思うと、仕事にも力が入る。
 非正規社員を正社員に登用した企業は平和堂以外にワールドやNTT西日本などがある。非正規でも正社員並みに働く人は多い。景気拡大による人不足に直面する業種では、待遇向上で彼らをつなぎとめる必要性が高まっている。
 とはいえ、全体の動きはまだ非正規を増やす方向にある。総務省の労働力調査によると、雇用者に占める非正規の割合は今年1−3月に過去最高の33・7%に達した。
 ジーエス・ユアサコーポレーションのバッテリー製造子会社(京都市南区)は、工程の約半分を請負業者が担う。製造現場の正社員はかなり以前から採用していない。
 背景には厳しい価格競争がある。「正社員のコストは割高。請負はその半分ぐらいだろう」(人事担当)。同社は派遣社員も受け入れるため、近く労働組合と協議する。
 製造部の男性正社員(42)は釈然としない。同じ工場の中で、立場の弱い請負の社員は低賃金で働かされている。男性は「正社員の給料を非正規に回せとはいえない。でも、これでは身分制度だ」とつぶやく。
 非正規社員にも現状への不満がある。京都市内のIT系企業で働く30代の女性契約社員は、朝から夕までパソコンにデータを打ち込む毎日を送る。仕事の内容は正社員と変わらない。なのに、年収の開きは40万円近い。
 「自分の正当な評価を知りたい」。女性は21日、中京区で開かれた職務評価の講座に参加した。欧米で普及している賃金計算法で、雇用形態に関係なく労働を客観的な数値で計る。「こんな方法があるんだ」。女性は目を見開いた。この日は基礎で終わったが、職場が同じで年収差が7倍近い正職員とアルバイトの評価事例も紹介された。正職員の職務価値が100に対し、アルバイトは74だったという。
 講座を開いた市民団体「均等待遇アクション21京都」(宇治市)の遠藤礼子さん(38)は「この評価法で非正規の待遇を是正したい」と普及に期待を寄せる。ただ、課題もある。「正社員の協力を得ようにも、自分の待遇を引き下げられかねないという警戒感が強い。彼らの給与を下げろとはいってないのに」
 人件費を抑えたい企業と現状を守りたい正社員、待遇を改善したい非正規。三すくみの現状を抜け出し、正当な労働の対価を実現する道は、まだ模索が始まったばかりだ。
【2007年6月27日掲載】