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第2部 ひずむ雇用(4)

障壁 氷河世代 なお厳しく
京都府などが主催した再就職面接会で、食い入るように訪問先企業を選ぶ若者たち。正社員歴のない若者も多い(京都市下京区・京都産業会館)
 青ざめて表情を失った若者が、就職支援施設の京都ジョブパーク(京都市南区)を訪れた。派遣先での正社員からのいじめや転職への不安をぽつり、ぽつりと打ち明ける。応対したキャリアカウンセラーの岡田洋之さん(50)は勇気づけるように話しかけた。「今の仕事を辞めるのも選択肢なんやで」  若者は天川浩さん(33)=伏見区。1996年に大学を卒業し、京都市内の小さな工具メーカーに就職した。不況のさなかで、上司はコスト削減しか頭になかった。上司の命令と取引先との板挟みになり、残業も続いた。
 企業が求人を絞っていた時期。仕事にあぶれるのが怖く、会社を辞められなかった。悩み、自分を追いつめた。3年後、うつ病になり退職を強いられる。アルバイトや派遣の仕事をこなしながら、再び正社員を目指した。希望を抱いて受けた入社面接は拷問だった。「続かんやつやな」。転職歴をけなされ、かえって自信を失った。
 94年から02年に学校を出た若者は「就職氷河期世代」と呼ばれる。今でこそ活発な新卒採用だが、当時はアルバイトや派遣社員などしか勤め口がなかった人も少なくない。まっとうな就職機会の失われた世代だ。
 安定した正社員への転職希望は強いが、壁は高い。厚生労働省によれば、企業が正社員を採用する際、アルバイトやパートの経歴を「プラスに評価」するのはわずか3・6%。3割が「マイナスに評価」し、「影響しない」を合わせれば9割以上が職歴と見ない。
 精神的な重圧も大きい。京都ジョブパークには多数の若者から相談が寄せられる。正社員は「利益ばかり求められ、プレッシャーが大きい」「成果主義で職場が殺伐としている」と訴える。一方の非正規社員も「単純作業ばかりで成長できない」「自分は駄目だ」と自己否定してしまう。
 「若者が弱くなっているというより、取り巻く職場環境が悪化している」。1000人以上の若者の相談に乗ってきた岡田さんはそう指摘する。
 若手が少ない中小企業には、氷河期世代に注目するところもある。
 花火大会企画の國友銃砲火薬店(下京区)は、長年採用を控えていたため20代の社員が少ない。思い切って04年8月、正社員経験のない20代半ばの若者を会社の営業部門に入れた。「苦労した分、働く意欲が強く、今では営業成績はトップ」と採用担当の金榮まゆみさん(45)。これからも埋もれた人材を発掘していくつもりだ。
 岡田さんたちの支援のかいもあり、天川さんに吉報が訪れた。今年3月、伏見区の検査会社に正社員として採用された。新天地では同僚が対等に接してくれる。「がんばろうと思える職場に初めて出会えた」。表情に明るさが戻った。
 氷河期世代は今、20代半ばから30代前半を迎えている。多くの企業が正社員の採用限度としている年齢は35歳。残り時間は少ない。岡田さんは願う。「企業にはもう少し若者への包容力を持ってほしい」
【2007年6月29日掲載】