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第2部 ひずむ雇用(5)

両立 育児支援、まだ一部
長女の菜月ちゃんを遊ばせながら自宅で仕事する南條さん。在宅勤務への満足度は高い(宇治市)
 堀場製作所社員の南條美樹さん(29)=宇治市=の職場は、自宅のパソコンの前だ。午前6時に“出勤”し、長女の菜月ちゃん(1つ)が起きるまで、メールチェックや海外子会社向けの社内報づくりをこなす。菜月ちゃんと朝食や散歩をともにした後は、傍らで遊ばせながら再び仕事に励む。
 昨年9月から、会社の在宅勤務制度を利用している。通信環境が整ったことで、家でも会社と同じ仕事をこなせるようになった。給料もフルタイムのころと変わりない。「仕事も育児も全力でやりたい。自分でも欲張りだと思うけど、会社は聞き入れてくれた」  女性の就業率は出産の多い30代前半で落ち込む。出産を境に離職したり、職場に復帰してもブランクに悩むなどの課題も多い。働き方の多様化や女性の戦力化が求められるなか、個々の企業では育児女性の就労支援が進み始めている。
 人材派遣会社のオムロンパーソネル(京都市下京区)は7月から、派遣社員の子どもを親会社のオムロンの本社(同)にある保育所で受け入れる。久保雅子京都支店長は「ブランクをつくらないためには、少しずつでも仕事をした方がいい。会社も人材を確保できる利点がある」と話す。
 だが、在宅勤務や社内保育所を用意する会社は、まだまれだ。恩恵を受ける人は限られる。
 街中の保育所を利用しようにも課題は多い。入所には就労証明書がいるが、子どもの預け場所が決まらないまま企業が採用してくれるとは限らない。育児女性を支援するマザーズハローワーク烏丸御池(中京区)の南富美代・就職促進指導官は「入所枠が空くまで待たないといけない保育所も多い。卵が先かニワトリが先かという難問は確かにある」と指摘する。
 母子家庭はより切実だ。生計を立てねばならない重圧は大きいが、社会的な支援や理解が十分とは言い難い。
 「もう次の人見つけたから」。西京区に住むシングルマザーの女性(28)は今年2月、パート先の工務店から一方的に解雇を通告された。2人の子どもがともにインフルエンザになり、3日間欠勤したのが理由だった。「入社面接でそういうこともあり得ると伝えたし、会社も納得したはずなのに」と唇をかみしめる。
 フルタイムで働きたいが、育児を抱えて残業や休日出勤をこなすのは難しい。それにあんな経験をした以上、民間に勤めるのは気が進まない。日雇いバイトをこなしながら、教員を目指して勉強している。
 国も母子家庭の就労支援に取り組んではいる。四年前、有期雇用のシングルマザーを正社員にした企業に一人あたり30万円を助成する制度を設けた。だが、事業を実施した自治体は06年度で26%にとどまる。京都府内に至っては実績ゼロだ。
 就労支援が空回りする一方で、母子家庭の平均収入の約半分を占めるとされる児童扶養手当は、来年度から最大で半額に減らされる。シングルマザーの女性は憤る。「支援の充実がまず先でしょう。やることの順番が違う」
【2007年6月30日掲載】