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第2部 ひずむ雇用(6・完)

保障 「最賃」では生活窮乏
自宅で夕げの三色めんをすする中村さん。最賃生活は腹を満たすだけで精一杯だった(京都市西京区)
 煮立った鍋にそばとうどん、中華めんを放り込む。調理に約5分。鍋を食卓に移し、そのまま一心にめんをすする。
 22日の中村修一さん(25)=京都市西京区=の夕げだ。材料代は締めて255円。月末までの残金5600円を思うと、おなかを満たせるだけでもよしとするしかない。「肉を食べたのはいつだっけ」。もう思い出せない。
 京都総評青年部が6月から始めた「げんなり最賃伝説」に参加した。府内最低賃金の時給686円で月21日間、フルタイムで働いたとして約11万5千円。そこから家賃や税金などの固定費を引き、約2万4千円で1カ月を暮らす。最賃生活の厳しさを体験し、国に最賃1000円以上の実現を訴える取り組みだ。
 中村さん自身、学童保育の指導員で得る月収は14万円程度。それでも最賃生活は厳しい。趣味への出費や外食はなるべく控え、慣れない自炊に挑戦したが、11日目で体重は3キロ減った。
 フルタイムで働いても生活保護以下の生活しかできない人たちの存在が指摘されている。「ワーキングプア(働く貧困層)」だ。正社員の勤め口に恵まれず、低賃金のアルバイトやパートで生計を立てている労働者に多いとされる。
 背景には、労働者の生活を保障するはずの最賃が役割を果たしきれていない現状がある。全国平均の時給673円は先進国で最低ランク。京都市など一部地域では月額で生活保護を下回るとの試算もある。
 政府は、ワーキングプア対策として、最賃引き上げを盛り込んだ最低賃金法改正案の成立を目指している。ただ、肝心の引き上げ幅は明示していない。全国の目安は労使でつくる中央最低賃金審議会が決める。これまでの引き上げ幅は年に数円でしかない。労働団体が大幅アップを求める一方、中小企業を中心とした経営者は警戒を強めている。
 左京区でコンビニ店を経営する男性(52)はアルバイト18人を雇う。昼間の時給は最賃に近い700円。男性も「可能であれば時給を上げたい」とは思うが、市内のコンビニは飽和状態で経営は厳しい。本部に支払う多額のロイヤルティーも重くのしかかる。「50円の最賃引き上げでも苦しい。100円となると経営が立ち行かない」
 日本を下回る最賃633円の米国。連邦議会は今年5月、中小企業への減税措置と併せて、最賃を2年かけて890円に引き上げる法案を可決した。日本でも、最賃引き上げだけでなく、中小企業の経営改善や下請け取引の適性化を求める声が強まっている。
 最賃生活を体験し、中村さんはつくづく感じたことがある。「今の最賃が保障するのは憲法がいう最低限度の生活と違う。最低限度の食事や」。体験で終わらず、引き上げを求めて声を上げようと思っている。京都総評青年部は近く、体験者の感想や記録を京都労働局に提出する。=おわり
【2007年7月1日掲載】