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(2)三重苦

食の信頼確保も負担に
衛生管理を徹底した工場で菓子の包装作業をする従業員(京都市山科区・ロマンライフ本社)
 「月を追うごとにひどい。このままでは店の行く末もどうなるか」。京都市西京区の豆腐店主、木久耕司さん(70)は、常連客が購入をためらう姿にやりきれなさを募らせる。
 悩みの種は一昨年ごろからの大豆の高騰で、六十キロ袋七千二百円が一割増しの八千円に。昨年二月に一丁百六十八円だった豆腐を百七十九円に値上げした。さらに昨秋からの景気悪化が追い打ちとなった。年末いつも多めに買ってくれる常連客の姿はなく、売れ行きは三割落ちた。
 本当は一丁二百円程度でないと採算は厳しい。だが、スーパーなどが百円程度の低価格品を並べる中、「不景気で買う側は少しでも安いところに流れる」と、これ以上の値上げには二の足を踏む。
 同様の個人経営が中心の府豆腐油揚商工組合(百二十七店)では、昨年一年間に十一店が閉店、廃業した。
 パン製造販売チェーンの志津屋(京都市右京区)は、小麦などの価格高騰から昨年に平均3%と5%の二回の商品値上げをした。来店客数は約3%減と反応は厳しく、内山孝一企画室長(59)は「買い上げ個数も減り、米飯に流れている」と頭を抱える。小麦やマーガリンの仕入れをメーカー直送に替え、「従来取引にこだわらない厳しい姿勢」でのコスト削減に必死だ。
 食品業界を揺るがせているのは原材料高や消費の冷え込みだけではない。昨年の中国製ギョーザ中毒事件やウナギの産地偽装などで食の安全が問われており、消費者の信頼確保のための負担が重くのしかかっている。
 豆腐製造販売の京とうふ藤野(上京区)は、主要商品にQRコードを印刷し、原材料や産地、メーカーなどの情報を開示している。油の酸性度検査など製造工程を含め、品質保証コストは商品価格の一割近くにのぼる。藤野清治社長(55)は「相当の負担だが、消費者の信頼を勝ち得るためには必要」と腹をくくっている。
 「一歩二円」。原材料高や品質保証の負担増を吸収するため、洋菓子製造販売のロマンライフ(山科区)は、工場内で従業員の動線を見直し、無駄な動きをなくすよう徹底している。ケーキ出荷時の箱詰め作業では、店舗別から大きさ別に担当者を振り分け直し、一個あたりの作業時間を五秒短縮した。
 中国産原材料の使用にも神経をとがらせ、卸売業者に安全証明書の提出を求める。検査項目は五百以上。そのすべてに目を通す。
 終わりのない安全対策と消費者の信頼確保、経営維持のはざまで、食品業者の模索は続く。
【2009年1月8日掲載】