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(3)資金繰り

「貸し渋り」に危機感
急速な景気悪化で受注が減る中で、織機を稼働させるタイヨウネクタイの工場(京都市上京区)
 年の瀬が迫った昨年十二月中旬、西陣織産地のネクタイメーカー、タイヨウネクタイ(京都市上京区)の松田太蔵社長(60)は電話口で思わず声を荒げた。「経営の実態をしっかり見てほしい」
 相手は三十年の付き合いがある金融機関担当者。五年前に二千七百万円あった借入金は滞りなく返済し、残金百万円にまで減っている。なのに翌春を見越した運転資金を依頼すると「先に在庫の処分を」と断られた。
 確かに業績は好調とは言えない。安価な中国製品の流入、クールビズなどの逆風下で急激に景気が悪化した。取引先の卸売三社の倒産で多少の焦げ付きも出た。だが、松田社長は「減らせという在庫は十年間ほとんど変わっていない。貸し渋りではないか」と融資態度の変化を感じ取る。
 中小企業の資金繰りが厳しさを増している。東京商工リサーチ京都支店によると、資金繰りが原因の倒産は昨年十一月に前月比二倍の十六件に急増。「今後も『貸し渋り』による運転資金欠乏型の倒産が増える」とみる。
 京滋の金融機関は金融庁の指導もあり、「積極融資で中小企業を支えたい」と口をそろえる。しかし、バブル崩壊後に巨額の不良債権処理に苦しんだ経験から、甘い事業見通しへの融資を警戒する。
 ある地元金融機関の幹部は「審査基準は変えていないが、決算の三月末を控え、これ以上不良債権は増やせない。『景気がよくなれば返せる』ではどうしようもない」と苦しい立場を明かす。
 国は昨年十月末から、信用保証協会が全額保証する緊急融資制度の指定業種を製造、卸売など中小企業の約八割にまで広げた。京都市中小企業支援センター(下京区)の認定窓口には、十二月末までの二カ月間に前年度の四・五倍の四千件近い申し込みがあった。金融機関は貸し倒れリスクがなくなるが、業績不振の中小企業にとっては「一時的な延命策に過ぎず、逆に金利負担がかさみ倒産に追い込まれることもある」(帝国データバンク京都支店)との見方もある。
 企業活動の潤滑油である健全な資金のめぐりを保ち、いかにものづくり現場に活気を吹き込むか。
 新たな兆しも見える。同センターの創業相談窓口には昨年四〜十一月に前年度の三倍近い八十二件の相談があり、うち二十三件に計一億二千万円の支援融資が決まった。建設会社の若手社員が住宅リフォームで独立したり、飲食店や服飾関係の起業が目立つという。難波邦拡事務局長は「逆境をバネにした前向きな動きをうまく支援していきたい」と話す。
【2009年1月9日掲載】