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イスラムの食事対応

教えの違いに向き合う
雄山荘が提供しているハラル対応の「ムスリムフレンドリーメニュー」。和にこだわり、年間約200食の注文がある
雄山荘が提供しているハラル対応の「ムスリムフレンドリーメニュー」。和にこだわり、年間約200食の注文がある
旅館に近い農園ではハラル料理や一般向け料理にも使う野菜や果物を自家栽培している(大津市雄琴1丁目)
旅館に近い農園ではハラル料理や一般向け料理にも使う野菜や果物を自家栽培している(大津市雄琴1丁目)

 訪日観光客の増加に伴い、滋賀県でも出身国や地域の慣習に合わせた受け入れ態勢の整備が課題になっている。イスラムの教えに基づいた食を提供する「ハラル」対応もその一つだが、認証要件が厳格なこともあり、県内では対応施設が広がっていないのが現状だ。2014年に県内の宿泊施設初のハラル認証を取得した大津市雄琴1丁目の温泉旅館「里湯昔話 雄山荘」は、「『違い』に向き合うことが、サービス全体の底上げにつながった」と取得の意義を強調する。

 蒸し鶏のサラダに牛肉のしゃぶしゃぶ、焼きサーモンの切り身…。地元産の野菜もふんだんに取り入れた夕食メニューは、雄山荘が提供しているハラル対応の「ムスリムフレンドリーメニュー」だ。

 鶏や牛はイスラム式で解体された肉を京都から取り寄せており、味付けもアルコール分が一切含まれていない調味料を使っている。豚肉や豚由来の製品もご法度だ。「食材に限定はあるが、日本ならではの風情を味わってもらえるよう、純和風の懐石料理に仕上げた」と森順一総料理長(52)は胸を張る。

 イスラム教の教えで「合法的なもの」や「許されたもの」を意味するハラルに対応するには、調理の過程でも非ハラルの食材が一緒になることを防ぐ必要がある。認証取得にあたり、雄山荘は調理の流れを一から見直した。調理の区画や包丁などの器具を分けることはもちろん、器も一般料理用とハラル専用に分けた。「館内に豚関連製品は一切入れない」と宣言し、だしもチキンベースに切り替えた。認証を継続するには、1年に1度の検査を受けなければならない。

 「正直、相当な手間と費用がかかる」(森総料理長)が、最近はイスラム教徒ではない宿泊客からもハラル料理の注文が入るようになったという。「ハラル対応するには、食材から調理過程、配膳まで厳密に管理する必要がある。認証の取得をアピールすることで、安心・安全を強く打ち出すことができた」と森総料理長は話す。認証取得初年度の外国人客は約5600人だったが、翌15年度は1万人を突破。ハラル料理はイスラム圏の宿泊客を中心に、年間200食を提供した。

 旅館の客室から見下ろせる約3300平方メートルの農園では、タマネギやグリーンピースなどの野菜のほか、クリやウメ、ビワなど果物の木も育てている。自家栽培した野菜や果物はハラル料理のほか、一般宿泊者向けの料理にも取り入れている。森総料理長は「国内外を問わず、安全でおいしいものを食べたいというニーズは高まっている。お客様の多様な要望にこたえる態勢づくりの一つがハラル認証。おもてなし力の向上で、外国人客の需要を取り込んでいきたい」と意気込んでいる。

【2016年05月22日掲載】