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障害者介助 広がる提携先

旅のお手伝い楽楽(京都市下京区)
車いす利用者に付き添い、観光名所を案内するスタッフ(京都市北区・金閣寺)

 体に障害があっても旅行を楽しみたい。そんな願いを手助けする。二〇〇八年二月、同志社大の学生だった佐野恵一社長(24)が設立した。介助者が付き添い、移動やトイレ、入浴を手伝う。この一年で百二十件の旅を手掛け、事業としても軌道に乗ってきた。「誰もが気軽に外出できる社会を」と夢を描く。

 大学一年の冬の家族旅行がきっかけだった。佐野社長は、八十歳を超えて車いす生活の祖母と両親で温泉に一泊二日で出掛けた。しかし、旅館でのトイレや入浴は大変で、旅館に手助けを求めたが断られ、体が不自由な人の旅の難しさを痛感した。

 翌年夏。教室の机に大学の「起業家養成講座」のチラシをみつけた。「アイデア一つで君も起業」という文句に温泉での経験を思い出した。「旅館に入浴補助サービスがあれば」。一年間受講し、事業計画書を提出すると最優秀賞を受賞、三年の春に一人で起業した。

 関西の旅館や特別養護老人ホームに手当たり次第、足を運んだ。学生一人で、相手にさえしてくれないことも多かったが、六十代の男性の旅行を手伝うと「もう旅なんて無理だと思っていたけど」と喜んでくれた。口コミで評判は広がり、昨年二月、幾つかの事業計画コンペの賞金など資本金七百万円で会社設立。現在では従業員四人と登録スタッフ二十人を抱える。

 事業を通して旅の効能をあらためて実感した。脳こうそくで車いす生活となった京都市内の七十三歳の男性の旅を四度手伝った。そのたび表情に明るさが増し、つえで歩けるまでに。「旅の介助にも介護保険が適用されれば旅行者がもっと広がる」と制度拡充への思いを語る。

 この一年、京都から各地への旅行付き添いに人件費がかさみ、利益は出なかった。しかし、実績が認められ、着実に事業拡大の提携先が広がっており、今月には京都市中心部に他府県からの京都観光を支援する相談所も設けた。「有料だからこそ気兼ねなく頼める」。そんな声が多いからこそ、さらにサービスを充実させ、事業として継続していくつもりだ。

佐野恵一(さの・けいいち)社長
 奈良県生まれ。同志社大経済学部卒。現在、同大大学院総合政策科学研究科1年。ホームヘルパー2級の資格も持つ。

【2009.03.23掲載】