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特注品で高圧研究支え

シン・コーポレーション(京田辺市興戸)
受注生産する高圧研究機器。ポンプもすべて特注だ(京田辺市興戸)

 千気圧、5千気圧という高圧下で生物や物質はどのように変化するのか。そうした環境下での研究に必要な専用の機器を大学、研究機関や企業向けに設計、製造している。

 例えば、高い水圧の深海で活動する微生物は、その酵素の有用性の解明が期待されており、高圧下の環境での光学測定などの研究に高圧ポンプや分析用の高圧容器が使われている。海洋研究開発機構(神奈川県)の潜水船「しんかい6500」にも開発した高圧容器が搭載されており、海底の土をその場所の気圧を保ったまま入れ、運び出せるようになっている。

 研究者はかつて誰もしたことがない高みを目指すため、研究機材も従来にない機能や質の高さが求められる。松本雅光社長(48)は「ここまでは従来の技術でできますが、その先はこういう理論で作ってみます、ときちんと説明しながらする。いつも挑戦です」と苦労を語る。

 微生物の研究だけでなく、食品化学の分野でも、高圧下の研究が進んでいる。加熱による殺菌や物質の変性が、圧力によっても可能になることが分かっており、研究機関から機器の発注を受けている。

 原則すべてが特注品で、依頼を受けてから完成まで4カ月から半年ほどかかる。昔は大学に研究用の機械を試作する場所があり、専門の技術者もいたというが、現在は予算や補助金の決定を受けて夏すぎや年度末に大学などから依頼が殺到するという。鉄を削ったりといった工程は専門業者に任せるが、設計や部品の組み立てなどは社長と社員3人でこなしている。

 「研究者は高圧機器の専門家ではない。顧客の話を聞きながら、思いを形にするのがわれわれの仕事」と松本社長。今年6月期は売上高9千万円に達し、来期は初めて1億円の大台突破を目指す。今後は、高圧機器だけでなく、理化学研究用機械全般の製造や販路開拓に力を入れるという。

松本雅光(まつもと・まさみつ)代表

 岡山大大学院修了。化学メーカー勤務を経て、臨床検査機器メーカーで高圧研究機器の営業や開発を担当。2007年にシン・コーポレーションを設立。兵庫県出身。

【2009.11.23掲載】