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コケ促成で緑化後押し

ヴァロール(京都市下京区)
本社が入るビル屋上で試験養生している建物緑化用のスナゴケ。軽量、メンテナンスフリーのため普及が期待される(京都市下京区)

 一辺50センチの正方形のトレーにぎっしり詰まった緑のコケ。ふかふかと柔らかく、手触りはじゅうたんのようだ。人工培養のコケで建物緑化ユニットを製造する。コケの種類は乾燥に強く長寿命のスナゴケ。独自の培養技術で露地なら2〜3年かかる生育期間を4カ月に短縮し、緑化需要が高まるオフィスや工場への販売を拡大している。

 最大の特徴は、軽量で維持管理が省力化できる点だ。屋上緑化植物で一般的な芝生の場合、1平方メートルの重量は湿潤時で約80キロ。対するスナゴケは土壌を使わないため約10キロですみ、建物への負荷が大幅に軽減できる。定期的な散水や刈り込みも不要で、「ほったらかしで緑化できる」(山下和貴社長)という。

 独自の培養技術は、創業者の村瀬治比古大阪府立大教授(農業環境工学)が開発した。種となるコケを液肥に浸し、LED(発光ダイオード)の光をあらゆる方向から照射。特殊な発芽形成を誘発し、後は野菜工場の要領で棚に移して育てる。この前半工程が2カ月、残り2カ月は屋外で養生する。

 2004年に大学ベンチャーとして創業したが、研究優先の体制が経営を圧迫。08年3月期に累積赤字が1億円に達し、村瀬教授と親交のある山下社長が事業を引き継いだ。山下社長は「高度な技術を権利化すれば立て直せる」と判断。特許取得と市場開拓に力を注ぎ、1年後に黒字転換を果たした。

 事業環境には追い風が吹く。一定面積の緑地確保を義務付けた工場立地法に続き、名古屋市などで住宅にも緑化を課す独自条例が誕生。昨年は工場や商業施設から引き合いが相次ぎ、本年度売上高は前年度の倍の1億8千万円に達する見込みだ。

 受注増に対応し、遊休工場の活用で2月にもコケの生産面積を現在の5倍の年5千平方メートルに引き上げる。10年度には2万平方メートルに増やす計画だ。余剰の工場を抱える企業への生産委託で事業拡大する戦略で、山下社長は「研究開発や市場開拓に力点を置きたい」と力を込める。

山下和貴(やました・かずたか)社長

 大阪市立大中退。LED照明メーカー勤務を経て、2008年6月にスナゴケ緑化ユニット製造のHERO(大阪市)の事業を継承。社長就任と同時にヴァロールに社名変更、本社を京都市に移した。東京都出身。

【2010.01.25掲載】