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高齢者の希望 旅に反映

萬転(京都市北区)
お年寄りが不安を感じない旅行を企画する萬転のオフィス。西河社長が生まれ育った西陣の工房を巡るツアーも企画する(京都市北区)

 「私が息子さんの代わりに旅へお連れします、というのがコンセプトです」。西河豊治社長(42)が笑顔を見せる。西河社長を含め計3人の小さな旅行会社。高齢者に狙いを絞り「かゆい所に手が届く」企画力が好評を得ている。

 2〜3人の旅行でも窓口で相談にじっくり応じ、関西一円や山陰、北陸などへ自社バスで連れて行く。「高齢者は大手の急がせるツアーでは疲れてしまう」。そこからこぼれた旅行ニーズを拾う。

 高齢者が気にかけるのは旅館の格や食事よりも、部屋から大浴場まで迷わず行けるかや観光地での歩く距離などという。「お年寄りは旅行に不安感がある」。それらを解消し、安心して旅してもらうのが社是だ。他社が尻込みした車いすの客を屋久島巡りに連れて行ったこともある。

 37歳で未経験の旅行業を始めた。起業する前は、義兄が経営する中古車仲介会社に13年間勤め、専務にもなった。会社が軌道に乗るまでは営業に走り回り、客の笑顔がうれしかった。しかし、経営基盤が安定すると「業務がシステム化して、自分の目標を見失った」。

 そんな中、母が大手の旅行ツアーで「疲れた。もう旅行はいい」とこぼすのを聞き、高齢者向け旅行業を思いついた。周囲の反対を押し切り起業。「生まれ育った西陣など上京の独居老人に喜んでもらえる」と再び客と接して働く喜びを取り戻した。

 今春から、京へ人を呼び込む新企画「西陣の職人たちと出会う旅」を始めた。紋意匠から機織り、金襴(きんらん)など西陣織の職人工房を訪れる体験型半日ツアーで、京都府の補助がある「小規模企業チャレンジ事業」に採択された。実は訪れる先は近所の顔見知り。旅行のお得意さんでもあるベテラン職人たちに「うちらを旅へ連れ出すばかりでなく、客を呼んで西陣を活性化してくれ」と言われて思いついた。

 「京都に生まれ育った者にしかできないツアーは、まだいくらでもあるはず」。京料理の食べ歩きや京の夜ツアーなど小回りのきくツアー企画を練って、高齢者向けツアーに次ぐ柱に据える計画だ。

西河豊治(にしかわ・とよはる)代表

 米国サウス・ジョージア短大卒。システムエンジニアを経て、1993年、義兄が経営する中古車販売会社に入社。専務を経て、2006年に起業。京都市北区出身。42歳。

【2010.06.28掲載】