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プラズマ技術を医療へ

魁半導体(京都市中京区)
物質を結びつけるプラズマ技術をバイオや医療など多方面に活用するため、処理装置の開発を続けている(京都市下京区・魁半導体事業所)

 固体、液体、気体に次ぐ「物質の第4の状態」と言われるプラズマ。その技術は薄型テレビや空気清浄機などにも応用されている。2002年創業の魁(さきがけ)半導体は、プラズマの可能性をバイオや医療分野にも広げようと独自の装置を開発して注目を集めている。

 プラズマは、分子から電子が外れて(電離して)いる状態を指す。電子を外されて不安定になった分子は、電子を求めて他の物質と結びつこうとする。この性質を利用すれば、シリコンなどの基板に有機物の汚れが付着していても、プラズマを照射することで洗浄剤を使わずに汚れを落とすことができる。

 半導体の製造工程では、すでにプラズマによる基板洗浄の技術が生かされているが、プラズマ処理装置は大がかりで、しかも「放電してプラズマ化するために発熱を伴い、細胞のような熱に弱い物質に使えない」(田口社長)という難点があった。

 そこで06年には、実験室でも容易にプラズマ処理をできるよう、電子レンジサイズに小型化した装置を開発。翌年には、発熱を40度程度に抑える「大気圧プラズマ装置」の開発にも成功し、熱に弱いフィルムの処理工程などで企業が採用している。

 今年1月には、粉末へのプラズマ処理を可能にする技術で、ネオクラスター推進共同体(大阪市)の「関西フロントランナー大賞」を受賞した。炭素粉末を水に混ぜるには、これまで界面活性剤を加える手法が一般的だったが、粉末にプラズマ処理を施すことで界面活性剤を不要にした。不純物を含まない炭素棒を作れるようになり、今話題のリチウムイオン電池の電極形成分野で注目を集めている。

 社員は田口社長を含めて5人。10年7月期の売上高3500万円を15年に1億2千万円とする目標を掲げ、開発を急ぐ。現在は、歯の詰め物の接着性を高めるなど医療分野への応用に向けて技術改良を続けている。「ものづくりに興味のある仲間を社員に招き入れ、得意のプラズマ技術で社会に貢献していきたい」と前を見据える。

田口貢士(たぐち・こうし)社長

 神奈川県秦野市出身。県内の大学を卒業後、半導体メーカーでの3年間の勤務を経て京都工芸繊維大工芸科学研究科博士課程在籍中に28歳で魁半導体を設立。2007年に株式会社化した。36歳。

【2010.10.25掲載】