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溶融塩で素材作り無限

アイ’エムセップ(京都市下京区)
550度にもなる高温の電気炉の中で炭素めっきの実験を進める社員たち(京田辺市・同志社大連携型起業家育成施設ディー・エッグ)

 大学発ベンチャーとしては珍しく、創業以来5期連続黒字が確実な研究開発型企業だ。溶融塩による電気化学反応から、環境・エネルギーの新材料を開発する。二酸化炭素(CO2)の貯留法や燃料電池の新素材などの実用化を目指している。

 溶融塩とは、塩化リチウムや塩化カリウムなどの塩が300度以上の高温で溶けたサラサラの透明な液体で、水は含まれていない。この溶融塩を、水に代わる溶媒としてめっきなどの電気化学反応に利用する。

 溶媒が水の場合は金や銀など金属20元素しか電気化学反応が起こらないが、溶融塩なら非金属も含め90元素で可能となる。同志社大教授でもある伊藤靖彦社長(69)は「電気化学反応の対象が広がり、素材作りの可能性は無限」と力を込める。

 例えば水溶液での電気分解では不可能な炭素めっきも、溶融塩なら可能だ。炭素めっきを燃料電池用セパレータに活用すれば、電池の小型化につながる。リチウムイオン電池の集電材に使えば、急速充放電の出力アップを図れ、電気自動車などの性能が高まる。炭素めっき技術はCO2排出削減にも最適だ。「CO2から炭素を固形化すれば、CO2地下貯留などの技術も必要ない」(伊藤社長)。

 有望な研究はまだある。窒素と水から電解合成でアンモニアがつくれ、化石燃料の代替にもなるという。

 同志社大の後押しで、伊藤社長が2006年に京都市内で創業し、現在の社員数は10人。研究は、入社した教え子たちが同志社大のベンチャー育成施設(京田辺市)で進める。創業メンバーの錦織徳二郎取締役研究開発部長(36)は「炭素めっきの実用化はもうすぐ。自分たちの技術が世に出る幸せを早く味わいたい」と研究に力を注ぐ。社長以外は20〜30代という若い情熱が原動力となっている。

 11年3月期は売上高1億2500万円、純利益500万円を見込む。収益の柱は、大企業の受託研究と官民の研究費提供。5年以内に増資で現行の資本金2千万円を20倍にし、研究体制を厚くして殺到するニーズに応える計画だ。伊藤社長は「日本の知財を担う会社として発展すれば」と期待している。

伊藤靖彦(いとう・やすひこ)社長

 1968年、京都大大学院工学研究科博士課程修了。京都大教授、同大学院エネルギー科学研究科長などを経て、2004年から同志社大理工学部教授。06年、学内ベンチャーとして起業。専門は溶融塩の電気化学反応の解析。

【2011.01.31掲載】