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杉皮使い芝用の土開発

大林環境技術研究所(近江八幡市)
滋賀銀行の研修センター屋上の芝生は、Eソイルを使って栽培されている(大津市浜町)

 二酸化炭素(CO2)削減のために導入が広がっている屋上や壁面緑化。植栽の一つに芝生がよく用いられるが、根腐れや土の取り換えが課題だ。大林環境技術研究所が開発した土「Eソイル」は、殺菌力を持つスギやヒノキの皮の繊維を土に混ぜることで菌の活動を抑え、芝を栽培しやくした。繊維と土の粒子の間に隙間ができるため空気が通りやすく、踏みつけられても根がよく張ってはげにくい特徴も持つ。口コミで、関西や関東の小学校の校庭やビルの屋上、京都競馬場(京都市伏見区)でEソイルを使った芝生の栽培が広がっている。

 「この15年間、スギとヒノキの皮だけで生きてきた」と語る大林久社長はかつて、武田薬品工業で農薬の研究をしていた。ある時、スギやヒノキの樹皮が堆肥化できないために焼却処分されていることを知り、驚く。堆肥化しないのは腐らないからで、その殺菌力を何とか生かせないかと考えた。「思い立ったらすぐ行動する」性格。同社を早期退職し、研究所を立ち上げた。

 スギやヒノキの皮は幅0・2〜0・3ミリ、長さ0・5〜20ミリに粉砕、加工する。施行現場で土に混ぜ、芝生の種をまく。実際の加工は、これまで皮を焼却していた栃木県や大分県の会社に委託。緑化工事は、全国の協力会社35社に依頼している。

 4年前には、繊維の絡ませ方を工夫し、急勾配の屋根や壁面を緑化できる工法を考案した。土が流れにくいため、大がかりな枠を設置する必要がなく、費用を従来の10分の1程度に抑えた。最大角度73度という兵庫県の屋内テニス場のドーム状屋根に採用され、関西ニュービジネス協議会の近畿経済産業局長賞などを受賞した。

 「世間が困っていることに解決策を示すのが最大の目標」(大林社長)。山形空港では、融雪剤によって土の表面に濃縮した塩分を、Eソイルで土全体に拡散させて薄める実験をし、植物が育つようになった。今、塩害に苦しむ東日本大震災の被災地で役立てることはないかと考えている。

大林久(おおばやし・ひさし)社長

 彦根工業高卒。武田薬品工業に38年間勤めた後、故郷にUターンし、1996年に大林環境技術研究所を設立した。近江八幡市出身。72歳。

【2011.05.23掲載】