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英語新学習法 日本中に

ATRラーニングテクノロジー会長 山田玲子さん
ATRラーニングテクノロジー会長 山田玲子さん

 英語の読み書きは多少できても、会話が苦手な人は多い。その理由を「読み書きの知識より前に、英語独特の『音の引き出し』が必要だから」と解説する。LとR、BとVなどの音の違いを聞き分けるかどうかで、会話の上達に差が出るという。国際電気通信基礎技術研究所(ATR、京都府精華町)の研究者として、人間の学習記憶を長年研究して得た知見だ。
 研究成果を基に、聞き取りや発音を重視した英語学習システム「ATR CALL(コール)」を開発。研究成果の事業化に熱心なATRと内田洋行の共同出資で英語学習システムの開発や販売を手がける新会社が四月に設立され、自らも会長に就任した。「起業や実用化への意欲は希薄だったけれど、いいものを作ってもうまく売らないと普及しないことが分かった。それに、経営に必要な法律や会計も、いったん勉強すると科学と同じ論理の世界で面白い」と充実感をにじませる。
 事業領域は学校が顧客の文教市場。すでに関西の大学や小学校、東京都立高校などで学習システムが採用された。学習システムを用いた英語教室も私立小学校の課外学習に取り入れられるなど、徐々に実績を挙げている。一方で「今の学習システムは使い手のニーズに応えきれていない」として新製品開発を進め、今秋にも販売する計画だ。
 大学に入学以来、三十年近く研究者の道を歩んできた。一貫したテーマは学習記憶。大学時代はハエ、大学院時代はトリが実験相手だった。一九八六年に設立されたばかりのATRに移り、人間を実験対象に据えた。人間の実験はハエやトリのようにはいかない。倫理的問題もあるし、被験者本人の意欲もある。そうした問題をクリアしたのが、英語学習だった。
 お年寄りから子どもまで幅広い年代で英語の学習効果を実験で確かめるなか、「聞き取りや発音を先に学んだ方が効率的」と確信し、学習システムを開発した。当初は実験データの収集が目的だったが、実験に参加する本人や子どもの保護者のニーズが高まり、学習システムのネット販売や本の出版、そして会社設立へと結びついていった。
 「大それた夢だけど、この英語学習法を日本中の小学生に広めたい」。そんな情熱が研究者と経営者の「二足のわらじ」を支えている。

 やまだ・れいこ 神戸大理学部卒。大阪大大学院博士前期課程修了。1986年にATR傘下のエイティアール視聴覚機構研究所に入り、2008年4月から現職。神戸大大学院客員教授も務める。神戸市出身。50歳。

【2008年8月24日掲載】