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研究活動の経験生かす

島津製作所分析計測事業部 MSビジネスユニット プロダクトマネージャー 飯田順子さん
島津製作所分析計測事業部 MSビジネスユニット プロダクトマネージャー 飯田順子さん

 食品の農薬混入や薬物乱用、環境汚染…。注目を集める社会問題の裏側で、島津製作所の質量分析計は、微量のサンプルから薬物や有害物質を特定し、量を調べる装置として活躍している。「二十五メートルプールに小さじ一杯のメタミドホスを入れても検出できる」。製品の開発から販売促進まで手がける担当として誇らしげに機能を解説する。

 質量分析計の特長は、本体の性能だけでなく組み合わせる装置によっても変わる。たとえば混合試料を分離するガスクロマトグラフや液体クロマトグラフなどだ。社内にはそれぞれの開発や製造の専門部署がある。顧客の大学や企業を訪問してつかんだニーズを担当部署に伝え、製品に反映させるのが自身の役割だ。

 性能や操作性、デザインなど伝える要望は数多い。とはいえ、担当部署にも専門家のプライドがある。「無理だ」「いやできる」の押し問答もしばしば。「でもやっぱり、技術者たちはいい商品を送り出したいという純粋な思いがある」。解決法を見いだし、「売れる商品」に仕上げていく。それだけに製品への愛情はひとしお。送り出した機種を「この子」「あの子」と呼ぶほどだ。

 いわゆる技術者ではなく、大学は薬学専攻だった。最初の配属は会社の製品である分析計測機器を自ら使い、操作方法を顧客に伝えたり、新しい分析手法を考えたりする部署だった。仕事をこなすうち、「使い手の立場を理解するには学部卒では限界がある。会社にもっと貢献するには、本格的な研究活動を経験する必要がある」と感じた。

 米国留学を希望したが、会社はなかなか首を縦に振らない。「会社に貢献したいからなのに」。仕事を辞めて留学することも考えた。辞表をしたためた夜、悲しさのあまり涙がこぼれた。「自分で思っていた以上に会社のことが好きなんだと気づいた」。辞職を思いとどまってから間もなく、会社の許可が下りた。

 留学経験は、その後の仕事に存分に生かされた。「使い手の考え方が分かるからこそ、ニーズを先取りして製品開発に生かせる」。開発に携わった製品は世界シェアの上位を占めるようになった。「トップシェアの製品をできるだけ増やすことが次の目標」と前を見据えた。

いいだ・じゅんこ 京都大薬学部卒。1983年に島津製作所入社。バージニア州立大留学や国際本部第一海外営業部マーケティンググループなどを経て1997年7月からプロダクトマネージャー。ノーベル化学賞受賞の田中耕一フェローは同期。48歳。

【2008年9月21日掲載】