京都新聞TOP > 経済特集アーカイブ > MyウェイMyライフ
インデックス

着物のよさ 多くの女性に

西陣和装学院学長 毛利ゆき子さん
西陣和装学院学長 毛利ゆき子さん

 西陣で着物製造会社を経営しながら、西陣織工業組合運営の西陣和装学院で着付けや着物の歴史などを教える。京都を代表する着物研究家で、講演会や着物発表会のために国内外を飛び回る。

 「着物の素晴らしさを多くの人に伝えたい。ただそれだけの思いで続けてきた。仕事から生きるエネルギーをもらっています」。一人の日本人として女性として常に着物とともに歩んできた。

 西陣生まれの西陣育ち。二十二歳で西陣の着物製造会社に嫁いだ。当時、着物は日常生活の中に溶け込んでいた。着物を美しく着こなす義母らの姿にあこがれた。「もっと着物を上手に着たい」。三十歳を前に西陣和装学院に入り、本格的に着物の勉強を始めた。

 とはいえ子どものころから親しんできた着物には一日の長があった。入学一年目で着付けの全国大会に出場し、いきなり優勝した。「優勝なんて頭になかったので気楽にできたのがよかった。今思えばあの時の経験が人生の大きなステップになった」と振り返る。

 ますます着物が好きになり、勉強に励んだ。歌舞伎の衣装など日本の服飾文化も研究し、大学などで講師を務めるようになった。欧米やアジアで着物ショーを開くたびに高い評価を受け「着物の素晴らしさにあらためて気付かされた」。一九八四年からは毎年、自らデザインした着物ブランドの発表を始めるなど順風満帆な日々が続いた。

 だが思わぬ苦難が訪れる。八六年、夫が亡くなった。急きょ社長に就任したが、経営の難しさを思い知る。「着物が好きという単純な気持ちだけで経営はできなかった。それでも好きな着物を作る会社のために、と必死にがんばりました」。経営を基礎から学ぶとともに新ブランド「安治郎」を立ち上げた。夫が亡くなった時はまだ大学生と高校生だった二人の息子も育てた。その後長男(42)は勤務先を辞め、会社に戻ってきてくれた。

 悲しみを新たな勇気に変えた。「私が知っている着物のよさをより多くの女性に伝えたい」と、業界振興に一段と力を入れた。着物業界は厳しさが続いているが、「今また若い女性が着物に興味を持ち始めている。普段から着物を楽しむ人を増やす取り組みが大切」と先を見据える。

もうり・ゆきこ 1972年から西陣和装学院講師。95年から現職。全国和装産地女性会副会長、西陣織工業組合理事。西陣・笹屋町に伝わる糸人形の研究にも取り組む。著書に「京都西陣きもの町」など。京都市北区。65歳。

【2008年9月28日掲載】