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一頭仕入れで安全追求

きたやま南山社長 楠本貞愛さん
きたやま南山社長 楠本貞愛さん

 築200年の農家を移築した北山通沿いの店舗で焼き肉店を営む。3年前に社長に就いて以来、国産牛を一頭丸ごと仕入れ、産地見学ツアーを行うなど、安全な牛肉の提供や畜産農家との連携に力を入れている。「農家も店も消費者もみんなが幸せに思える仕組みにしたい」と語る。

 焼き肉店は1965年に父親が創業した。安心安全な食材にこだわり、全国に約30店舗を持つまでになったが、膨大な借金も抱えた。財務面を担当し、資金繰りを巡って父親と大げんか。会社を飛び出した。戻らないと心に決めていたが、7年後に父親が引退し、会社に呼び戻された。

 債務整理を任され、債権者と交渉の日々が続いた。京都の本店以外はすべて閉店し、不動産を売却。「負債を返済するため、債権者からとにかく死なんといてと言われた」。折しも国内でBSE(牛海綿状脳症)問題が発生し、売り上げは急減。安心安全な食材への消費者の目は厳しさを増した。「負債を抱え、父が求めた理想なんて一切嫌いと思っていたけど、その大切さを実感した」とかみしめる。

 本店を改装し、国産牛の一頭仕入れを導入してから、売り上げが上向き始めた。現在は放牧で肥育する丹後の畜産農家など全国3カ所から3種類の牛を仕入れている。「安心安全を追求していくと、川上の生産者にたどり着いた。どの牛を見ても肥育農家から加工場の人までみんなの顔が思い浮かぶ」。牛すじなどは週1回家庭用に販売し、全頭消費に工夫を凝らす。地元農家の野菜も店頭で売る。

 家庭では子ども6人を育てるパワフルなお母さん。うち1人は里子だ。事業整理で多忙な時期に里子が決まったが、「借金を減らしてもらった分、社会的使命を果たさないと」と引き受けた。「ほかの子どもたちも兄弟の中で一番大事に思ってくれている」。ふっと優しい笑顔になった。

 くすもと・ていあい 洛北高卒。74年から家業の焼き肉店を手伝う。94年に退社、夫が主宰する大津市の出版社で児童書などの出版に携わる。2001年に「きたやま南山」に戻り、06年1月から現職。店舗は京都市左京区下鴨北野々神町。京都市出身、53歳。

【2009年7月19日掲載】