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老舗の重み受け継ぐ

松田桃香園社長 松田須英子さん
松田桃香園社長 松田須英子さん

 39歳の時に家業の宇治茶販売店を継いで13代当主となった。江戸初期の寛永年間の創業から約380年の歴史で女性の当主は初めてだった。柔らかな言葉遣いと自然な振る舞いの中にも、老舗を担う重みと仕事への自負がにじむ。「先祖と同じように誠実にせなあかん。もっと精進せなあかん。お客さんが私を見て口に入れるお茶を買っていくことへの責任があるんです」

 小学生時代は学校から帰宅すると祖母が玉露を入れてくれた。日常に根付いた自然な流れの中で日本茶に親しみ、大学卒業後、当主の父の下で働き始めた。

 大手筋商店街(京都市伏見区)にある店は京都府内産の宇治茶のみを販売する。伝統を守りながら「今」を意識した商品作りを貫く。茶葉の調整でいれやすさと手ごろさを備えた煎茶、風味を損なわないぎりぎりの線でほうじて最高級煎茶の味と香りを残したほうじ茶などを生み出した。

 日本茶をより身近にする道具にもこだわる。大小の湯飲みや急須といった道具ひと揃えを木箱に詰めた「京のお茶しまひょ」や、1杯分の抹茶を茶碗の中でこせる「マイ抹茶こし」を開発。これら道具は京都の職人の手による品で、木箱のふたは盆にも使えるように工夫するなど随所に女性の感性を入れた。

 依頼があれば、ホテルや会館に出向いて日本茶のいれ方と楽しみ方を教える。1度刻みで湯温を測るようなマニュアル式ではなく、使う器の大小、当日の寒暖、飲む人の好みをいろいろと勘案しながら「良い加減」を探す。「一杯のお茶を入れることが日本人らしい細やかな心遣いを育む。京都で茶を商える幸せをかみしめながら、選び抜いた本物を売り、日本茶の良さを伝えたい」。

まつだ・すえこ 大学卒業後、松田桃香園に入り、99年に13代当主となり社長就任。趣味は写真で、自身が撮影した商品の写真を店のホームページに掲載している。京都市出身、50歳。

【2010年3月7日掲載】