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酵母の謎に尽きぬ興味

月桂冠総合研究所副主任研究員 堤浩子さん
月桂冠総合研究所副主任研究員 堤浩子さん

 「酵母は味も香りもアルコールも作る。多様な面があり、知れば知るほど分からないんです」。入社から一貫して、酒造りの基礎となる酵母や麹(こうじ)の働きを研究している。いまだに解明されていないことも多く、興味が尽きない。

 月桂冠総合研究所は、11代当主が1909(明治42)年に前身の大倉酒造研究所を設立したのが始まり。以来、長年積み重ねてきた知識や技術を受け継ぎながら、年間約10〜20種類の新商品を生み出す同社を研究面から支える。

 多様な機器を駆使してはじき出したデータと顔を付き合わせる日々。実際の商品開発は担当部署が行うが、一番うれしいのは「研究内容が生かされた製品が消費者の手に届くこと」と、メーカー社員らしい喜びを口にする。

 味や香りが引き立つ吟醸酒用の酵母の開発では、仕込みサイドとの調整や、300株ほど育てた酵母から最適なものを選ぶ作業に苦労した。2年かけて納得のいく商品に仕上がったときには「とにかくほっとした」と、根気の要る仕事にも笑顔を絶やさない。

 日本酒の市場は縮小傾向で、経営環境は厳しい。日本酒を健康面から分析し、アピールすることにも力を入れる。5月には、成分同定が難しいとされていた酒かすを分解したペプチドに、肝障害予防効果があることを突き止め、学会で発表した。

 自身を含め6人が所属する基盤研究グループではサブリーダーを務め、職場の雰囲気づくりに心を砕く。酒造りは昔ながらの男性の世界と思われがちだが、「今は女性の杜氏(とうじ)もいる。仕事で男女差を感じません」と明るい。

 学生時代に化学に興味を持ち、化学系専攻のある大学に進学。そこで発酵工学と出合い、酒造会社への入社を決意した。今後は、研究の基盤を醸造に置きながらも「お酒以外のものに応用できるネタを提供できれば」と夢を描く。

つつみ・ひろこ 広島大大学院修了。1991年に月桂冠に入社。99年から現職。2001年から2年間、酒類総合研究所(広島県東広島市)に出向。体を動かすのが好きで、最近の趣味はゴルフ。徳島県出身。44歳。

【2010年7月4日掲載】