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1日1センチ、綴織一筋16年

川島織物セルコン綴織製作チーム 池谷広美さん
川島織物セルコン綴織製作チーム 池谷広美さん

 たて糸の間によこ糸を通し、絵のような細かい柄を作り出す。やすりで溝を作ったつめの先端で糸を詰める。綴織(つづれおり)は帯や緞帳(どんちょう)の製織技法で、複雑な柄は1日7時間織っても幅1センチしか進まない。

 「技術的にはまだまだですが、特に柄が重たい大作が完成すると達成感がある」

 入社以来綴織一筋で、16年がたった。毎日織機に座り、帯などを織り続ける。足元の台を踏んでたて糸を開き、通したよこ糸を木の道具で打ち付け、糸の密度を高める。根気のいる作業だが、ものづくりの面白さが実感できる。

 大学を卒業後、コピーライターになった。だが子どものころから抱いていた職人へのあこがれが強くなった。「事務仕事はいろいろなことが目の前を流れていくだけで何も形に残らない。会社員は向いていない」と転職を決意する。

 一時はパン作りを学んだが、知人を通じて技術者の育成に力を入れる川島織物の存在を知った。見学で初めて綴織の仕事を見て驚いた。「よくこんな風に織れるなあと感心した。すごいと思って30分ぐらい見続けた」という。

 熱意が実って29歳で就職した。毎日、自分の機に座って織り続けた。同時に海外で暮らす夢までかなえた。2000年から2年間、国際協力機構の青年海外協力隊員としてモンゴルで子どもや女性に手芸などを教えた。「現地の人のシンプルな生活を見て、自分は小さなことをごちゃごちゃ考え過ぎだと思った。以前よりも性格が大ざっぱになった」と笑う。

 気がつけば中堅社員になった。今年初めて祇園祭の山鉾の懸装品(けそうひん)修復にかかわった。霰天神山(あられてんじんやま)保存会(京都市中京区)が復元新調した後掛を2人で織り、金糸の龍が雲間を舞う姿を表現した。今の目標は伝統工芸士。「うまくなると信じてこれからも織り続けたい」と話す。

いけや・ひろみ 大阪外国語大卒。広告会社やパンメーカーなどを経て1994年、川島織物入社。趣味は海外旅行で、英語とモンゴル語を話す。最近は着物で出かける機会を増やしている。静岡県出身。45歳。

【2010年7月25日掲載】