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松風研究開発部第二研究室研究員 藤井亜希子さん

生活快適にする製品を
松風研究開発部第二研究室研究員 藤井亜希子さん

 入れ歯に使われる人工歯や歯の研磨器具などあらゆる歯科材料を手がけるメーカーで、入れ歯の素材となる樹脂の開発に当たる。世に送り出す製品は口の中に入れるものだけに、素材にも高度な安全性が求められる。物質を分析しては何度も試験をする地道な作業の繰り返しだが「生活を快適にするお手伝いができる仕事」と胸を張る。

 「化学の知識を生かして暮らしに身近な製品をつくりたい」と歯科材料の業界を選んだ。入社当時はまだ、社内に女性の研究開発者がいなかった。「女性はだめだと思われるんじゃないか、と常にプレッシャーを感じた」と振り返る。しかし、入れ歯を使う患者に男女の区別はない。「私の役割は化学と女性の橋渡しをすること」。研究開発では高品質、高機能の追求ばかりに目がいきがちだが「製品の使いやすさ」も重視するよう心がけた。

 開発した樹脂製品は、ボトルに入った粉と液体を混ぜると次第に固化していく。歯並びやあごの形など、患者に合った仮歯や入れ歯をつくるため、主に歯科医院で使われている。ある時、製品が納入された医院に足を運ぶと、粉と液体の調合を女性の歯科衛生士が担当していた。「手の小さな女性もストレスなく使えるようにしなければ」。ヒントは台所の調味料にあった。ボトルのふたを指一本であけられるワンタッチ型に変え、注ぎ口もこぼれにくいタイプにした。「お客さんとの接点が少ない研究者だからこそ、使い手の声を大切にしたい」

 樹脂研究の知識を応用し、現在はつけづめなどネイル素材の開発も進めている。「(研究で使う)溶剤でネイルが溶けてしまうので私はおしゃれできない」と笑うが「女性ならではの感性を大切に、生活が快適になる製品をつくっていきたい」と力を込める。

ふじい・あきこ 大阪大基礎工学研究科化学専攻修士課程修了。1999年に松風入社。研究開発部で歯科材料の開発に携わり、2008年4月に主任級の研究員に。月に3回、ゴスペルサークルで歌声を磨く。大阪市出身。京都市伏見区在住。36歳。

【2010年11月14日掲載】