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溶接の技で新分野追求

クオリス社長 篠ア有紀さん
クオリス社長 篠ア有紀さん

 歯科技工士からドイツでの職人修業を経て、精密レーザー溶接加工というものづくりの最前線で起業した異色の経歴を持つ。「ドイツの職人に『興味を持った』と軽く言ったのが発端で、1カ月後にはドイツへ修業に。人生が変わりました」と振り返る。

 精密レーザー溶接加工を請け負う「クオリス」を創業して9年。欠損や傷でへこんだ金型を、レーザーで金属を溶接して肉盛りする仕事だ。

 歯科技工士だった25歳の時、技工士関係の学会でチタン加工の精密レーザー溶接について発表したドイツ人技術者と知り合った。社交辞令を述べたら「いつ来る」と本気で誘われた。「面白そうなことを腰を据えて教わるチャンスはめったにない」とドイツ行きを決めた。

 ドイツ南部のマウルブロン。レーザー溶接機の販売を手掛ける企業で無給の研修生活が始まった。社長のかばん持ちや顧客の溶接機の保守点検など、朝から晩まで働いた。言葉が不自由な分、機械構造や点検手順を必死に覚え、ドイツ人社員に「こいつと一緒ならはかどる」と認められたときはうれしかった。

 レーザー溶接はアルゴン溶接や電気溶接より精密な溶接に優れ、直径最小0・1ミリで溶接できる。3カ月目には「日本でこの仕事をしよう」と決意、1年間修業を積んだ。

 2002年、京都府久御山町の知人の工場を間借りして創業。溶接精度が評判を呼んだ。「製造業界に男尊女卑はない。現場の職人は技術を認めてくれる」。

 初受注で日本製金型に触れて衝撃を受けた。「こんなに細やかで美しい金型は見たことがない」。日本人の器用さと工夫する力に感動した。

 現在は同町内の貸し工場で、自身を含め3人が加工を手掛ける。今後は製品試作や医療機器、デザイン家具などにも進出を構想する。「経験のない材料を加工し、新分野の仕事に挑戦したい」と技術向上を追求している。

しのさき・ゆき 家政学園高(現京都文教高)、大阪大歯学部付属歯科技工士学校卒。歯科技工士を経て、2001年から1年間ドイツで精密レーザー溶接技術を習得。02年に起業。40歳までに結婚が夢。社名の由来はラテン語の「品質」。大阪府枚方市在住。35歳。

【2011年7月17日掲載】