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一大決心で店舗移転

とも栄菓舗専務 西沢恵利さん
とも栄菓舗専務 西沢恵利さん

 JR安曇川駅のほど近く。昭和初期創業の菓子店「とも栄」(高島市)の店内には、和菓子だけでなく色とりどりのケーキも並ぶ。次々に訪れるお客に、優しく声をかける。「昔夢見ていた店が、今ここにあるんだと、ふと思うことがある」とほほえむ。

 日本史が好きで、鳥取県内の高校を卒業後、京都市内の大学に進学。将来は社会科の教師になろうと考えていた。

 そんな時、京都の和菓子メーカーに職人修業に来ていた現社長で夫の勝治さん(49)と出会った。実家の両親に反対されながらも、大学を中途退学して21歳で結婚した。

 それから和菓子店の跡取りの妻としての生活が始まった。勝治さんの母である義母はすでに亡くなっていたが、義父と義理の祖父母と弟妹の大家族。掃除、洗濯、炊事をこなし、店番や配達なども手伝った。結婚翌年に長男、2年後には長女が生まれ、病気の義父の世話も加わって、毎日が猛スピードで過ぎた。「女手が求められていた。家事も商売もしたことがなく、本当にまだ子どもだった」と振り返る。

 見知らぬ土地で知り合いもいない中、励みになったのはお客だった。「頑張ってるね、おいしかったよと声をかけてくれた。お店が私の居場所をつくってくれ、お客に救われた」

 だが、経営は徐々に厳しさを増していた。当時は駅前の商店街に店があったが、長引く不況や商店街の衰退で、客足が減っていた。「5年先が見えない。30代なら失敗してもまだやり直せるはず」。14年前、駅から5分ほどの大通り沿いに新しく駐車場付きの店を構えた。

 移転が功を奏し、売り上げは倍増。住宅兼工場も建て替え、今は子どもたちも製菓の道へ進み始めた。「どん底で現状とかけ離れていても、夢を持つことが大切。無駄な経験は何もない。仕事や家庭に悩む従業員にも伝えたい」

にしざわ・えり 立命館大文学部中退。1986年とも栄菓舗入社、2002年から専務。高島市男女共同参画推進懇話会委員。販売士2級。夫、長女との3人暮らし。趣味は読書で、ビジネス書から恋愛小説まで併読している。鳥取県出身。高島市在住。47歳。

【2011年8月21日掲載】