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ビルの維持保全に情熱

K建築設計事務所代表 山田敬子さん
K建築設計事務所代表 山田敬子さん

 建物を維持保全するための設計監理が主な仕事だ。マンションやオフィスビルの外壁塗り替えや耐震改修、配管修繕、屋上防水修繕、構造体補修を手がける。「新築と比べて華はないが、『なぜここが傷んだか、設計者は何を考えたか』と推理小説を逆からたどるような仕事です」

 オーナーが1人の場合が多いオフィスビルや賃貸マンションは折衝がスムーズに進みやすい。大変なのは分譲マンション。建物全体の補修には管理組合の合意が必要だが、入居者の意見がまとまりにくい。「話し合いが紛糾し、業を煮やして途中で帰ったこともある」。互いに頭を冷やして再検討する。入居者によって外構補修や屋上防水の補修など求める工事が異なり、「私が優先順位を提案し、予算に応じて説得する」。

 1992年の開業当初は、新築物件の設計を主に取り扱った。当時は立命館大の新キャンパスに向けて草津市で学生マンション新築が相次ぎ「仕事に困らなかった」。しかし、95年の阪神大震災が転機となった。被災家屋の危険度判定ボランティアに参加して気が付いた。維持管理の手入れが行き届いている家屋は被害が少なかった。一方、軒下の換気口の前に物を置いた住宅は通気が妨げられて土台が腐るなど、ずさんな維持管理の住宅は被害が大きかった。「建てる図面ばかりでは駄目。もっと勉強しよう」。新築への熱が冷め、建物の維持保全を手掛けるようになった。

 新築は景気の波があるが、維持保全の需要は建物がある限りなくならない。新規参入も多く、他社のずさんな工事の後を引き継ぐこともある。

 日々の仕事に追われ「将来の夢を持つほどの暇もない」中、気が休まるのは手芸や洋裁。夜中に没頭して自分の服を作り上げることも度々だ。でもやっぱり楽しいのは、元来勉強嫌いがはまってしまった建築だ。「建物をみれば使った人の物語が読み取れ、造った人の苦労も分かるんです」

やまだ・けいこ 堀川高、京都建築専門学校卒。1987年、京都市内の設計事務所に入社。別の事務所を経て、91年1級建築士資格取得。92年に「K建築設計事務所」開業。2008年から京都府建築士会の常務理事。京都市中京区で一人暮らし。47歳。

【2011年9月4日掲載】