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黒の深みや質感を追究

馬場染工業5代目黒染師 馬場麻紀さん
馬場染工業 5代目黒染師 馬場麻紀さん

 子どものころ、周りには華やかな着物があるのに、「何でうちは黒なの」と嫌っていた黒染めが、今はかっこいいと思う。父親からバトンを受け継ぎ、洋服の染め替えに軸足を移して家業を守る。客から「きれいな黒に染めてくれてありがとう」と掛けられる言葉が何よりの励みだ。

 手芸好きが高じ、高校卒業後に専門学校でファッションやテキスタイルデザインを学んだ。跡取りになる気はなく、生地メーカーや服地会社に勤務した。28歳で結婚を機に退職。30代半ば、ネット通販を立ち上げるため、家業を手伝い始めた。その時も5代目になると思っていなかったが、父親のがんが転機となった。代々つぎ足してきた着物の染料を眺め、「捨てなしゃあない」とつぶやく姿を見た瞬間、継ごうと思った。「染めるわ」と、その場で長靴とエプロンを着て工場に入った。

 父親は3年前に亡くなり、「やりたいようにやれ」と残してくれた言葉を胸に、洋服の染め替えを本格化させた。一口に黒と言っても、深みや質感が異なる多様な黒がある。染める時間や温度を調節し、客の願いと生地に合った黒を追究している。「若いころに買ったピンクのコートを染めて」「亡くなった夫のポロシャツを子どもに着せたい」と思い出のつまった洋服を預かることもしばしば。デザインや縫製を学んだ強みを生かし、傷んだところがあれば修理してきれいな状態で渡す。

 3人の子どもも黒染めに興味を持っている。住まいと仕事場が同じ建物で、仕事をする姿を見せられるし、わがままを聞いてあげることもできる。「私も忙しい時は、ご飯作れへんとわがままを言うんです」と笑う。家族、父親の友人、仕事仲間…。多くの人に支えられていると実感している。

ばんば・まき 上田安子服飾専門学校卒。会社勤めを経て2008年から現職。SMAPや福山雅治が好きでコンサートに行くことも。高校3年の長女、同1年の長男、中学1年の次男との4人暮らし。京都市中京区出身、在住。46歳。

【2011年10月9日掲載】