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心和む光のオブジェ制作

月あかりデザイン研究室主宰 村上菜也子さん
月あかりデザイン研究室主宰 村上菜也子さん

 「心地いい空間は絶妙の演出がされている。単なる照明でなく、あると落ち着くと感じる光のオブジェを作りたい」。大学在学中に出合った光の演出に魅せられ、照明作家として活動する。

 平等院の雲中供養菩薩(ぼさつ)像からイメージしたリズミカルに動く雲の形、組みひもを飾り、宝箱のようにも見えるあんどん型。優しい光で浮かび上がる造形にふっと心が和む照明を生み出している。

 修学旅行で訪れた京都は、ショーウインドーのちょっとしたしつらえにも細やかな感性が息づいていた。父親と「4年で帰る」という約束をし、大学でテキスタイルを学ぶため、あこがれの京都に来た。

 翌年、父親が亡くなった。自分も、身近な人を失った経験のない友人もどうしていいか分からない。大学に居づらくなり、展示会やコンサートの空間演出を手伝い始めた。さまざまな年齢の人と接し、相談もできるようになった。

 手伝いを通じて、光の演出の重要性に気付いた。「光のバランスで人が居やすい所、居心地の悪い所がある」。卒業後、本格的に演出の仕事を始めた。しかし、イベント開始前の限られた時間で準備しなければならず、徹夜になることも。仕掛けは次第に大掛かりになり、一人の作業も難しくなった。体調を崩し、一点ものの照明を作ろうと決めた。

 3年前には、若手作家が職住一体で活動する町家の並ぶ「あじき路地」(東山区)に引っ越した。展覧会や、路地の知名度も手伝って、作品を知ってもらう機会が増えた。

 一方で、今は「作家活動が難しい時期」ととらえる。人々が物心両面で余裕を失っていると感じる。だからこそ、美しいものをめでる気持ちを伝えたいと願う。故郷にいる母親は「帰ってきなさい」と心配するが、「京都は必要な材料がそろう。顔の見える距離に職人さんがいて、顔を覚えて説明してくれる」。この関係を大切に、ここで作品を作り続けるつもりだ。

むらかみ・さやこ 京都精華大卒。2004年から照明作家として活動。12月には福知山市で個展を開く。趣味は散歩、生け花。月あかりでは毎週土日に喫茶室を開いている。神奈川県出身。京都市東山区在住。34歳。

【2011年11月13日掲載】