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和装復興へ奥深さ伝える

伊と幸取締役社長室長 北川幸さん
伊と幸取締役社長室長 北川幸さん

 父が社長を務める会社を切り盛りするようになって10年。社長のそばで経営全般を学ぶ。事業の提案をすることも。「支えてくれる社員、多くの人からの助言のおかげでやってこられた」と振り返る。

 伊と幸(京都市中京区)は今年、創業80周年を迎えた。染め呉服の素材となる高級絹織物の白生地の商社として、創業時から企画立案、製織、商品展開にまで携わっている。

 「最初から着物が大好きというわけではなかった」。学生時代は国際舞台で活躍したいと憧れた。大学院では国際政治経済を研究。ファッション関係の専門商社に入社し、主にバッグ類を担当した。海外を飛び回る日々を送っていたが、知り合いのイタリア人から「日本人は欧米の物まねが好き」と言われ、ショックを受けた。

 そんな時に出会ったのが、祖母の形見の「無双の着物(紗袷(しゃあわせ))」。美しさ、格好良さに驚いた。日本文化の象徴とも言える着物が身近にあるのに、目をふさいでいた自分に気づいた。商社を退社。祖父が創業した会社に入った。今では家業を「天職」と誇らしく感じ、「日本の文化をしっかり説明できてこそ、真の国際人」と思う。

 今春、小学校の同級生が、亡き母親の襦袢(じゅばん)を持って来社した。「子どもの入学式に着たい。母にも孫の成長を見てもらいたい」。約30年ぶりに再開した同級生の気持ちに応えるため、真心を込めて襦袢の汗じみを落とした。呉服不況が続き、着物文化が家庭で母から子に伝わりにくい時代。自身も中学3年と小学3年の娘2人を育てる母親だ。あらためて「着物は、母から娘へ、さらにその子へと受け継いでいける宝物」の思いを強くした。

 白生地に触れてもらおうと、本社ビル内にある「絹の白生地資料館」で案内役も務めている。来館者の中では特に30〜40代の女性が着物を勉強するのに熱心という。「和装の市場は縮小しているけど、悲観はしていない。興味を持ってくれた人に着物の奥深さを伝え、和装復興につなげたい」。柔らかな語り口に強い決意をにじませた。

きたがわ・さち 青山学院大大学院修士課程修了。専門商社に3年勤めた後、伊と幸入社。10年前から現職。趣味はピアノ。中3の長女に弁当を毎日手作りし、キャンプなど親子が一緒に体験し、思い出を共有することが大切という。京都市中京区在住。絹の白生地資料館の開館は平日午前9時半〜午後5時半。要予約。TEL075(254)5884。

【2011年11月20日掲載】