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根気と集中、つづれ織り

西陣織伝統工芸士 不破恵美子さん
西陣織伝統工芸士 不破恵美子さん

 西陣織の伝統的な技法の一つ「つづれ織り」。横糸で模様を織り出す技法で、根気のいる手作業だ。そのつづれ織りを50年以上にわたって手掛ける。「配色が無限で、横糸で立体的にも平面的にも、自由自在に織れるのが魅力」とほほ笑む。

 生家は織物業とはほとんど無縁で、父親は宮大工、母親は和裁や洋裁の仕事をしていた。子どものころ、近所で織っているのを見せてもらったが、特に関心を持たなかった。だが、病弱な父親に代わり早く母親を助けたいと、中学卒業後に選んだのが、つづれ織り職人の道だった。

 実家近くの織屋に見学に行くと、工房内はきれいで、職人たちは静かに仕事に打ち込んでいた。「最初から最後まで一人で責任もって仕上げられる。結婚しても続けられそうと思った」

 糸の結び方から教わり、先輩職人たちの残糸で伊達締め、次に無地の帯の織り方を練習した。模様のある帯を織れるようになったのは約2年後。だが、実際に商品を制作するのは怖かった。上司に頼んで母親のための帯を作らせてもらった。自分で初めて作った帯を喜んでくれる母親の姿を見て、自信がついた。

 当時は和装需要も旺盛で、さまざまな柄の帯やふくさを織った。野菜柄、南国調、唐草模様。「年によってブームがあり、面白かった」。10年近く勤め、「他のところでも勉強したい」と退職。西陣織工業組合の職人に転職した。

 西陣織会館でつづれ織りを実演しながら、美術作品や校旗を織った。織機に向かうと、すぐに集中して「厳しい顔をしてる」と周囲からからかわれるほどという。30代半ばで結婚し、出産、子育てを経験しながらも、辞めることは考えなかった。

 1983年に伝統工芸士となり、2010年には現代の名工に選ばれた。「思った通りに織れるようになった今が、一番楽しい。体が動く限り織り続けたい」

ふわ・えみこ 京都市中京区生まれ。双ケ丘中を卒業後、織屋のつづれ織り職人として約10年勤務。1973年に西陣織工業組合の職人となり、西陣織会館(上京区)でつづれ織りの実演と制作をしている。夫と長男、長女の4人暮らし。68歳。右京区在住。

【2012年01月08日掲載】