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「想い出結婚」意義発信

京鐘社長 辻順子さん
京鐘社長 辻順子さん

 40歳で主婦から貸衣装業に身を投じた。顧客の願いにこたえ、京都の有名社寺での「京都想い出結婚式」、挙式の代わりの写真プラン「写婚式」などを事業化してきた。

 転機となった27年前、嫁ぎ先の呉服店の貸衣装部門は、社員が取引先に引き抜かれるなどして廃止が話し合われていた。「再建したい」。以前から「40歳になったら挑戦の人生を」との思いもあり、思い切って店主の義父らに申し出た。長年世話してきた祖母をみとり、娘3人も成長して手が掛からなくなっていた。

 だが、高校卒業後、20歳で結婚し、外で勤めた経験もない嫁の申し出は反対された。悔しくて業界の現状や展望をノートにまとめてみせた。その熱意はやがて伝わった。

 それからは「猪突(ちょとつ)猛進でやってきた」。ホテル内の衣装室をはじめ貸衣装展示のブライダル館、東京支店などを次々に開設。京風民家を生かした写真撮影先も設けた。まだ業界で少なかった女性への偏見、競争に歯を食いしばり、社長の夫が急逝する悲しみの中でも、歩みは止めなかった。自身、生後11カ月で父を亡くしており、「叔父夫婦に大事に育てられたけど、迷惑を掛けてはならないという独立精神だけは持っていた」。

 看板事業の社寺での「想い出結婚式」は25年ほど前、妊娠中の新婦を気遣って式場相談に訪れた新郎の親の要望で、若宮八幡宮(京都市東山区)に依頼して挙げたのが最初。その後、地元や観光客からも京都らしい場で結婚式をしたいという要望が相次ぎ、清水寺や上賀茂神社など有名社寺との提携に乗り出した。「世界遺産や国宝での挙式は喜びになるし、身内や親戚の絆ができる」。今では大津市の三井寺や奈良の薬師寺をはじめ東京、鎌倉でも展開し、それぞれを商標登録している。

 「人生かけて貸衣装業を再建し、ここまで来た。ものすごく厳しかったが、その分だけ感動は大きい」と振り返る。その上で「家庭があり、子どもを育てていくことを立派に果たすには出発が大事」と結婚式の意義を発信し続ける。

つじ・じゅんこ 1985年、京都市左京区の呉服店「京鐘」の貸衣装会社「京鐘衣裳」専務に就任。夫の死去に伴い96年に両社の社長に就任。2001年に呉服店事業を整理し、婚礼事業に特化した。滋賀県日野町出身。京都市左京区在住。67歳。

【2012年01月22日掲載】