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古い織物工場、カフェに

ファブリカ村オーナー 北川陽子さん
ファブリカ村オーナー 北川 陽子さん
 木造ののこぎり屋根の元織物工場に、黒光りする昭和初期の重厚な織機がたたずむ。2009年10月にオープンしたカフェギャラリー「ファブリカ村」。週末のみの営業だが、近隣だけでなく他府県からも多くの人が訪れる。

 「父母が残してくれた織物工場を、アパートや駐車場にしたくなかった。まだ事業として成り立つほどではないが、手仕事の良さを伝え、人が集まる拠点にしたい」と話す。

 近江の伝統的麻織物の工場を営む両親のもとに生まれ、京都の芸術短大を卒業後、テキスタイルデザイナーとして家業を手伝った。当時工場では、婚礼用夏座布団の生地を中心に染織を請け負っていた。だが、生活スタイルの変化や、海外からの安い麻製品の輸入増加などで仕事は減少した。

 「小さな工場で大量生産はできない。自分たちでオリジナルの商品を作って売ろう」。工場に隣接し、家族で住んでいた家を改装、12年前に店を開いた。

 だがその2年後、父親が死去、工場を閉鎖せざるを得なかった。自分でデザインした麻布で服やストールを作って百貨店の催事などで販売したり、組合で近江の麻織物のブランド向上に取り組んできたが、ずっと昔ながらの工場を生かしたいと考えていた。

 3年前、彦根在住の造形作家と知り合ったのをきっかけに、1年かけて工場を改装。両親が創業してから50年目、人々が集う場として工場に新たな命を吹き込んだ。

 週末ごとの営業に加え、平日も組合や商工会などの会合や打ち合わせで日々走り回る生活だが、大学生と高校生の子どもも手がかからなくなり、病気だった母親も元気を取り戻した今が、自由に活動できる時だと感じている。「今は自分でモノをつくるより、ファブリカ村を通して、本物の良さやモノの思いを多くの人に伝えたい」

きたがわ・ようこ 京都嵯峨芸術大短期大学部卒。両親が営む染織加工の北川織物工場でテキスタイルデザイナーとして家業に従事。湖東繊維工業協同組合理事、しが中小企業女性中央会会長。夫、大学生の長女、高校生の長男の4人暮らし。旧能登川町(現東近江市)出身。東近江市在住。49歳。ファブリカ村は東近江市佐野町657。TEL0748(42)0380。

【2011年7月31日掲載】