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地道に安全な食物作り

タキイ種苗研究農場 湖南市針
新品種の開発中のトマトの苗。トマトのハウスは農場内に5棟ある(湖南市針)
 見渡す限り農場が続き、温室やビニールハウス約百五十棟が並ぶ。この時期は屋外の栽培はあまりないが、ハウスに入ると、新品種の開発試験中の野菜が青々と葉を付け、花を咲かせている。
 ダイコンのハウスでは、冷涼地向けの夏ダイコンの品種改良が進む。ブリーダーと呼ばれる育種の専門家が米粒大のつぼみにピンセットで手早く花粉を付けていく。エタノールで手やピンセットを消毒し、ほかの株の花粉が付かないよう紙の袋をかぶせる。約二百鉢に咲く花一つ一つすべて手作業だ。種ができると定植し、実の収量や耐病性などを調べて次の交配につなげる。「一つの品種を世に送り出すまでに十年はかかる」と加屋隆士農場長(53)は話す。
 毎年、野菜で二、三十品種、花で三、四十品種の新商品を送り出すが、その陰で数万種類の種を開発している。大きさや形、味、収量、耐病性など、研究項目は多岐にわたる。
 「野菜はおいしく、作りやすいこと。安心安全で、健康になれることも大切」(加屋農場長)。トマトの主流品種となった大ヒット商品「桃太郎」もこの農場で生まれた。耐病性は当初四種類だったが、昨年発売した兄弟品種「桃太郎サニー」では十一種類まで増やしている。

バイオ研究も

ダイコンの人工授粉。作業員がピンセットで花粉を付ける
 十年ほど前からは、バイオテクノロジーを取り入れた研究も進めている。農場の一角に建つ研究棟では白衣を着た研究員が検査機器を駆使して作物のDNAを調べ、どんな特性を持つかを分析する。実がなる前に特徴が分かり、効率的な開発が可能になったという。ナス科やウリ科で導入しており、ほかの野菜や花にも拡大していく予定だ。
 収穫した野菜についても、分析機器を用いて甘さやうま味、酸味を数値化して調べる。リコピンやカロテンなど栄養面もすべて分析する。
 ただ、DNA分析を活用しても遺伝子組み替えは手掛けていない。日本では安全性や環境への影響から消費者、農家とも慎重なためだ。加屋農場長は「昔から行われている自然な交配の方法を用い、安心してもらえる商品の開発を続ける」と力を込めた。
<メモ>  タキイ種苗研究農場 1968年開設。野菜や花きの品種改良や新品種開発を手がける。従業員は約120人。敷地面積は70ヘクタール。敷地内に付属の園芸専門学校を併設する。全国でも珍しい無料の学校で、約70人が寮生活を送っている。

【2009年2月16日掲載】