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生産改革で寿命2倍に

椿本チエイン京田辺工場 京田辺市甘南備台
(上)熱処理した部品の組み立て工程。ICチップ検査装置向けなどのチェーンは±0・05ミリの停止精度を誇る(京田辺市甘南備台・椿本チエイン京田辺工場)
(下)主力の産業用ローラチェーン。10年ごとに性能を高めた新製品を投入している

 室温が40度前後の建物内に高さ約2メートルの大きな炉が10台並ぶ。産業機械などに組み込むチェーンの部品がコンベヤーに乗ってゆっくりと炎の中に消える。900度程度の高温で2度熱処理すると、原材料の鉄に硬さとしなやかさが加わり、長寿命で精密な製品になる。
 チェーンの用途は、工場内で使う生産機器からデジタル家電、エレベーターまで幅広い。力を伝える伝動用や搬送用など役割も多様なため、用途に合わせて熱処理の温度や時間を変え、最適な部品に仕上げる。
 工場長の三尾克彦常務執行役員は「創業から90年の歴史の中で材料から加工までチェーンに適したものづくりの経験を積み、改善を続けてきた」と話す。
 京田辺工場は世界最大のチェーン製造拠点で、産業用スチールチェーンの国内市場で3分の2、世界全体でも4分の1のシェアを握る「つばき」ブランドを支える。受注する製品は、曲がる部分の軸と軸の距離(ピッチ)が数ミリのプリンター向けから1メートル超の鉄鉱石搬送用まで2万種類に上る。チェーンは、筒状のローラや回転軸のピンなど五つの部品からできている。鉄の板や線材をプレス機などでそれぞれの部品の形に整え、熱処理した後磨いてから組み立てる。最大の建物は南北300メートル、東西110メートルで、内部は鍛造装置のごう音が響く。立体駐車場に使うピッチ45センチの大型品など一部の工程に手作業を伴う製品も多い。
 多品種少量生産に対応できる現場づくりのため、とくに人材育成に力を注ぐ。2004年から「必要な製品を必要な時に必要なだけ作る」ための生産改革を始めた。チェーン事業部の永井康詞技術部長は「現場レベルから問題を洗い出し、改善した結果、生産性が向上し、作業ミスも限りなくゼロに近づいた」と手応えを語る。改革は新製品開発の強化にもつながる。主力の汎用チェーンでは、筒の内側に油がたまる幅1ミリ程度の溝を設け、製品寿命を従来の2倍に延ばした。景気の冷え込みで受注環境は厳しいが、現場の挑戦に終わりはない。

<メモ>  椿本チエイン京田辺工場 大阪市にあった工場を移転し、2001年に完成、02年に全面稼働した。産業用チェーンで世界最大の工場。敷地面積23万平方メートルで、京セラドーム大阪6個分。従業員約1000人

【2009年9月14日掲載】