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ドームの屋根つなぐ

太陽工業瑞穂工場 京都府京丹波町八田
(上)裁断したテント生地を床に広げ、生地同士をつなぎ合わせる溶着作業に打ち込む従業員(京丹波町八田)
(下)瑞穂工場で製造したテントは6月に開幕するサッカー南アフリカW杯のネルソンマンデラベイスタジアムの屋根にも使用された

 体育館ほどある板張りのフロアに大きな白いシートが広げられ、電気工具を手にした作業員が点在する。「一見ばらばらのように見えますが、きちんと工程ごとの流れ作業になっています」と田原祐志工場長は話す。
 東京ドームをはじめ、天井を薄い膜で覆う大型施設向け屋根用テントの受注生産を手掛ける。使うのはテント生地だが、通常のアウトドア用とは違い、手触りは厚紙に近い。素材はフッ素樹脂でコーティングしたガラス繊維で、厚さは1ミリに満たない。日光を遮らず明るい上、軽くて柔軟で施工も容易なため、スポーツ施設のほか駅舎やホテルなどさまざまな建物に採用されている。
 仕入れた幅3・8メートル、長さ150〜200メートルの生地をまず目視で外観検査し、設計図に沿って機械で自動裁断し、形状に合わせて張り合わせる。2枚の生地の端を重ねて間に特殊なフィルムを挟み、サンドイッチのように上下からプレス。400度近い熱を加えてフィルムを溶かして生地同士を接着する。溶着と呼ぶこの工程は、今なお手作業だ。
 「プレスに髪の毛1本でも入ると焦げが残るため、根気が必要な作業です」と田原工場長。スタジアムなど大型施設の場合、何百枚もの生地を切って張り合わせ、数カ月がかりで仕上げる。月平均の生産面積は約1万平方メートルだが、多くの競技場や公共施設が新築されるオリンピックや万博の時期によって需要は大きく変動するという。
 シートの形状はスタジアムに多いドーム型から山を連ねたような屋根まで多種多様。意匠性が高いほど製造工程は複雑になる。生産人員は現在13人で、操業を始めた24年前より3割余り少ない。「いろんな屋根の膜を作り、工程改善のノウハウを蓄積してきた」(田原工場長)という。
 屋根用テントのシェアは世界トップ。今年開幕する上海万博の施設やサッカーW杯南アフリカ大会の試合会場にも採用された。2年後のロンドン五輪をはじめ、すでに4年後のブラジルW杯に向けた営業も始めている。

<メモ>  太陽工業瑞穂工場 東京ドームの屋根の受注に伴い1986年に稼働。翌年に総面積4万平方メートルを仕上げた。88年にトラスの生産工場を増設。敷地面積約13万4千平方メートル。従業員49人。本社は大阪市淀川区で、大阪と福井にも工場がある。

【2010年3月16日掲載】