京都新聞TOP > 経済特集アーカイブ > ルポ京滋ものづくり
インデックス

微細加工、目視も活躍

オムロン野洲事業所 野洲市市三宅
半導体の回路パターンを露光したシリコンウエハー(中央右)の検査をする大浜さん=野洲市・オムロン野洲事業所
 検査用の顕微鏡をのぞくと、ミクロの世界が広がっていた。直径20センチのシリコン製の円盤(ウエハー)に1ミリ角の半導体チップが1万個以上形成され、それぞれ千分の1ミリ単位の複雑な回路が浮かぶ。家電や携帯電話、自動車に不可欠な電子部品を支える超微細加工の技術だ。
 半導体の製造技術を応用したMEMS(微小電気機械システム)製品の生産拠点だ。携帯電話のマイク部品や血圧計に使う圧力センサーなどを主力とし、ウエハーの状態で1万枚を月産できる。
 製造現場は最高値で病院の集中治療室の10倍という清浄度を誇るクリーンルーム。わずかの埃(ほこり)も不良品の原因となるため、作業員は無塵服とマスク、帽子で、記者にも埃の出ない特殊なメモ用紙が渡された。
 半導体製造は鏡のように磨いたウエハーに感光剤を塗った後、電子回路を描いた板「フォトマスク」を通して露光し、表面に回路パターンを焼き付けて配線を形成する。
 MEMSは完成したチップをさらに加工していく。携帯のマイク部品の場合、研磨して薄くした後に専用の薬液で必要な部分を溶かす「ウエットエッチング」を施す。音の響く空間を内側に作り、高感度を実現する。
 大半の工程は機械だが、人間の力も欠かせない。チップが正しく形成されたか調べる検査。歪みや「ピンぼけ」はないか…。作業員が肉眼でウエハーを凝視し、不良の有無を見抜いていく。製造技術課長の大浜辰夫さん(49)は「一瞬で判別する人もおり、まさに匠(たくみ)の世界。機械も人間の感性にはかなわない」と話す。
 開発中のスマートセンシングモジュール(SSM)は、MEMSセンサーや情報処理、通信と複数機能を併せ持つ。1台で人の動きを感知して制御システムにデータを送ることができ、空調の最適化など工場や家庭の省電力に応用が期待される。実際にクリーンルームの一部で4月に行った実証実験では、消費電力を25%削減した。
 営業技術課長の前葉通尚さん(49)は「SSMという『賢いセンサー』で社会の省エネルギー化に貢献したい」と語った。

メモ

センサー機能から通信までこなし、省電力化への応用が期待されるスマートセンシングモジュールの試作品
 オムロン野洲事業所 1971年に開設された日本IBM野洲工場を引き継いだセイコーエプソンから2007年にオムロンが生産設備などを譲り受けて操業開始。敷地面積4万2千平方メートル。マイクロデバイスのほかコネクター類を生産する。従業員は約450人。

【2011年10月24日掲載】