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用途は多種多様 斬新なデザインで活路

(2)高島扇骨(高島市)
特殊な刃物を使って扇骨の表面を仕上げる吹田さん。多くの人に扇子の良さを知ってほしいと語る(高島市安曇川町)

 扇骨は扇面が張られる仲骨と、仲骨を両側から支える親骨から成る。生産工程は34に別れ、それぞれの工程を別の職人が分業する。ほとんどが手作業だ。

 主に京都市内の扇子店に出荷され、扇面が張られて完成品になる。実用品以外にも舞扇、茶席扇、祭事用など多種多様。だが、実用品はクーラーや扇風機の普及で使用する人がめっきり減った。もっぱら京都観光の土産として買い求められているのが現状という。

 昨冬は新型インフルエンザなどの影響で京都市を訪れる観光客が減り、需要が落ち込んだ。不況の影響で安価な中国製品などが売れ、高級品は買い控えられる傾向にある。

 一方、職人の高齢化は進んでいる。1958年に600人余りいた職人は、現在は約300人。後継者不足は深刻だ。県扇子工業協同組合理事長の吹田政雄さん(61)は「都会へ働きに出る人が増え、職人のように根気がいる仕事をしようとする若者は少ないようです」と打ち明ける。

 逆境を少しでも打ち破ろうと、扇骨作りで培ったノウハウを生かした新たな試みも始まっている。

 同市新旭町の「SEN−KOTSU工房」は、デザイナーが考案した斬新なデザインの扇子や和風照明、しおりを手掛ける。多胡裕之代表(46)は「扇骨だけでは展望が見いだせない。従来の枠にとどまることなく、オリジナリティーある商品を開発する必要がある」と話す。工房が産み出した新商品は東京方面から引き合いがあり、着実に売り上げを伸ばしている。

 地元の福祉施設では竹の削り屑で竹紙をすき、名刺やはがき、コースターに応用した商品も作っている。

 ブランド力を高めるため、材料の竹を地元で調達しようとの動きもある。現在はほとんどが京都、島根、中国産だが、高島市は本年度から地場産業振興策として、安曇川沿いで竹林整備を始める。3年がかりで荒れた竹林を間伐し、まっすぐに伸びた高品質の竹を育て、扇骨材にしようという試みだ。

 吹田さんは「すべて地元の安曇川産の竹を使うことで、より繊細で優美さを強調した伝統的な高島扇骨を作りたい」と期待を込める。

<メモ>
 江戸時代末期、はんらんを繰り返す安曇川の堤防強化のために植えられていた竹を利用して、農家が作り始めたとされる。当初は農閑期の副業だったが分業化が進み、地場産業として定着した。京都市を中心に全国の扇子店に出荷、シェアは9割を超える。生産量は1958年の1330万本がピークで、昨年は約300万本。

<ぷらすα> 伝統重んじつつ新発想

扇骨の材料で作った照明器具と親骨にサクラやイチョウなどを細工した斬新なデザインの扇子(高島市新旭町)
 「竹は生きもの。常に一所懸命です」。この道46年になる吹田さんは、伝統の重みをこう語りながら、扇骨の表面を仕上げた。

 削り終えると滑らかさが極まり、触れるとまるで指に吸い付くよう。扇子の美しさを支える職人の仕事が扇骨に輝きを与えた瞬間を垣間見た気がした。蓄積された技で新分野を開拓する多湖さんの工房は、デザイナーの斬新な発想を形にする匠(たくみ)の技であふれていた。

 伝統を重んじる一方で、果敢に新しさを採り入れようとする高島扇骨。さらなる発展へのキーワードは不易流行にありそうだ。

【2010.04.25掲載】