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意匠や用途、新たな試み

(7)信楽焼 現代風アレンジ(甲賀市)
茶葉を乾燥させて紅茶を作れる信楽焼の焙炉(甲賀市信楽町)

 壁や床、棚を白色でそろえた古い民家に、陶器製の皿や花瓶が並ぶ。甲賀市信楽町のギャラリーショップ「shiroiro−ie」は、地元の窯元6社でつくる有志集団「SHIN−RA」の商品を展示販売している。現代風のシンプルなデザインが目立つが、食器の縁などに信楽焼の特徴とされる土の風合いが残る。

 ショップは、メンバーの「松庄」が2年前に開設した。同じくメンバーの丸滋製陶の今井智一社長(42)は「信楽焼を取り入れた生活スタイルを消費者に提案したい」という。

 「六古窯」の一つで、長い伝統を誇る信楽焼の産地は、明治時代以降も火鉢から植木鉢、食器や建材向け外装タイルへと時代に合わせて主力商品を生み出してきた。だが、近年はヒット商品に恵まれず、消費低迷が追い打ちを掛ける。信楽陶器工業協同組合による組合員対象の調査では、昨年の生産額は46億7千万円と、ピークだった1992年の28%までに落ち込んだ。

 SHIN−RAは7年前に発足し、デザインの研究や東京都内での展示会などを重ねてきた。「今の消費者は、本当に納得したものにしか手を出さない」と今井社長。「信楽焼の新たな魅力を探り、うまく消費者に伝えることで、売れる商品を生み出せるはず」と考える。

 異なる業種と連携し、新たな用途を探る窯元もある。同市信楽町の丸十製陶と茶加工販売の茶城藤田園は今春、家庭で茶葉を乾燥させて紅茶を作る皿形の焙炉(ほいろ)を開発した。煎(せん)茶なども作れるが、若い女性の利用を狙い、紅茶を前面に打ち出す。丸十製陶の北村尚之社長(34)は「違う業種との連携で、信楽焼の可能性を広げたい」という。

 10月1日から信楽まちなか芸術祭の一環として県立陶芸の森(同市)で始まる「ライフ・セラミックス展」では、窯元15社とデザイナー7人が共同開発する商品とともに、開発の様子も映像などで公開する。同展事務局は「開発にまつわる物語も付加価値になる。商品の背景も信楽焼の魅力として来場者に伝えたい」と意気込む。

 (原則として第2、第4日曜日に掲載します)

<データ>
 生産額は1992年に前年の世界陶芸祭や土物ブームが追い風となり、167億9200万円に達し、ピークに。信楽陶器工業協同組合の組合員数は現在、143社と92年の約1割減にとどまっているが、各社の規模縮小が進んでいるという。

<ぷらすα>若い力に期待

「SHIN−RA」の窯元が手掛けた商品が並ぶギャラリー(甲賀市信楽町・shiroiro−ie)
 取材先で、30〜40代の窯元関係者と出会うことが多かった。「食べていくのがやっと」の給料でも、職人の仕事にあこがれ、産地に飛び込んでくる若者もいるという。こうした若い世代の力が、新たな挑戦には欠かせない。

 今秋、甲賀市信楽町一帯では「信楽まちなか芸術祭」(信楽陶芸トリエンナーレ実行委員会主催)が開かれる。多彩なイベントを通じ、信楽焼の伝統や芸術性はもちろん、産地を支える若い世代の存在にも目を向けたい。

【2010.09.12掲載】