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多彩な風合い特色 横糸工夫 広がる用途

(10)高島綿織物(高島市)
せわしなく織機が動く工場内。糸遣い、風合いの出し方に各社が工夫をこらす(高島市新旭町・川島織布)
 夏も涼やかな肌触りのクレープ(縮(ちぢみ))のシャツ、工業資材として酷使に耐える丈夫なベルト…。綿は織物としてさまざまに姿を変え、暮らしや産業を支えている。

 豊富な水と湿度がはぐくんできた江戸時代からの産地。新旭や安曇川一帯の高島市には今も、織り工場の「機屋(はたや)」や、撚糸(ねんし)、機械関係の工場が軒を連ねる集落が多い。

 肌着素材を主に作る川島織布の工場。広幅(約1・9メートル)の織機が、5千本近い縦糸に、横糸を1分間に5百〜7百回も打ち込む。機音が途切れなく聞こえる高速だが、社長で、高島織物工業協同組合理事長の川島諦(さとる)さん(65)は「これでも、機械の能力の半分のスピードに抑えています」。

 その理由は、横糸に「撚(よ)り」をかけた布の強度を保つためだ。1メートルあたり千回ほど撚られた糸に、各機屋の直属の撚糸工場で、さらに1200回以上も撚る。すると、織り込んだ時にシボという凹凸ができ、独特の風合いと肌触りの良さが生まれる。

 縦糸は組合で共同加工しているが、横糸は各社の工夫。川島さんも、備長炭を練り込むなど化学繊維を組み合わせて、機能性を持つ製品を得意とする。糸の太さや素材、密度の組み合わせは、数百種類にもなる。「多彩な生地を織ることができる。高島産地の特色とも言えます」

 吸水・速乾の良さを生かして、クールビズ向けのシャツやジャケット、しゃれた柄のステテコにも、高島綿織物の用途は広がっている。

 衣料用の「軽布」に加え、帆布など産業用の「厚織り」が多用途に使われているのも、高島の特長だ。ここでも、各社が独自技術を生かす。

 綾織りや、色糸を使った柄物を多く扱う駒田織布。サンプルの布を解析してパンチカードを作り、縦糸の操作で巧みに仕上げる。駒田勤社長(57)は「得意先の要求に早く応える。技術力と品質管理の蓄積でどこまで提案できるかが肝心」といい、1961年の創業から、ファンベルト、タイヤ、研磨布…と主力製品の変化に対応してきた。

 技術を生かし、中には全国シェアの多くを占める工業資材を扱う事業所もある。

 ただ、最終の加工や縫製は主に他地域で行われるため、製品の高島ブランドとしてのアピールは弱かった。組合は昨年から、従来は大阪で催していた素材展「ビワタカシマ」を東京でも開催。高島地域地場産業振興センターの仲立ちで、地元の縫製業者と厚織りの機屋が組んで10月からオーダーメードかばんを売り出すなど、消費者を意識した動きが進んでいる。

<データ>
 最盛期7百以上あった事業所も、今は50ほど。昨年の生産高は54億円。高島織物工業協同組合は11月に、縦糸を整経する新たなサイジング機を市の支援で導入し、製品の多様化に対応する。漂白や染め、プリントをする高島晒協業組合も加工技術の向上に努める。

<ぷらすα>流通つなぐ工夫を

綿帆布のかばん、縮のシャツ…。商品生産への取り組みも進む(高島市新旭町・高島地域地場産業振興センター)

 帆布のかばん。糸遣いと風合いに一目ぼれした。だが、地元で売られる高島綿織物の商品は少ない。各機屋に継承された技術は、時々のニーズに応じて多様に発展してきた。素材展は来春で25回目。下請けの仕事が多い中で、品質を保つ努力とともに「技術を何に生かせるか常に考える」「難しい注文にも素早く応え、断らない」という強い開発意欲を感じる。と同時に「商品として消費者に直接届けたい」という歯がゆさも多くの機屋が持つ。彼らの技術力と、地元での加工やデザイン、流通をつなぐ仕組みづくりの工夫が、「高島ブランド」をさらに高めるだろう。

【2010.10.24掲載】