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高い利便性強み 県 誘致強化、復調狙う

(11)工場立地 (県内全域)
大手メーカーの生産拠点が集積する工場団地。滋賀県には工場立地に有利な条件がそろっている(甲賀市水口町・近江水口テクノパーク)

 景気低迷で、滋賀県の工場立地が落ち込んでいる。近畿経済産業局によると、昨年の県内での立地件数は22件と前年から半減し、今年上半期もペースは変わらない。交通の利便性など滋賀の立地条件には定評があり、環境関連企業の集積など成果も出ているが、景気回復の遅れや急激な円高が足かせとなっている。

 滋賀の工場立地は、景気の安定や新名神開通効果などから2008年までは堅調に拡大した。だが08年秋からの世界的な不況に加え、08年度で県の助成制度が終了したことなどから、09年は7年ぶりに前年割れした。県企業誘致推進室は「これだけ円高が進むと国内に工場を新設するという決断がなかなかできないようだ」と分析する。用地の取得後に着工を延期する企業もあるという。景気の低迷は既存の工場にも影響を与えている。昨年は積水ハウス滋賀工場(栗東市)やオムロン水口工場(甲賀市)が閉鎖したほか、生産規模を縮小する動きもある。県内に工場がある京都の電気機械大手は「円高対策や人件費削減のため今後の設備投資は中国などアジアを中心に考える」(幹部)と話す。

 滋賀の製造業は、県内総生産の4割超を占め、雇用も支えている。このため県は工業団地がある市町と連携し、海外移転が難しい基幹工場や研究開発施設に重点を置いた誘致活動に取り組んでいる。

 滋賀には工場立地に適した条件がそろっている。高速道路や鉄道など交通インフラが整い、中部や北陸圏に近い。特に大阪や京都から1時間以内という利便性を評価する企業は多い。工業用水や労働力が豊富で、大学の集積も強みになっている。

 好条件を背景に明るい兆しも見え始めた。電気自動車用リチウムイオン電池製造のリチウムエナジージャパン(京都市)が9月末に栗東市の新幹線新駅予定地跡地で新工場に着工した。京セラや三洋電機の太陽電池工場、パナソニックの燃料電池工場などと合わせ、県内の環境産業基盤の厚みがさらに増した。

 県と市は同跡地で環境関連を中心とする工場の誘致や道路整備を推進することで合意している。嘉田由紀子知事はリチウムイオン電池工場の着工を受け、「関連産業やサービスの誘致につなげ、相乗効果を出したい」と話す。

 来年度から始まる県の産業振興戦略策定にかかわった関西学院大の川端基夫教授(企業立地論)は「中国にはリスクがあるうえ、中小企業にとって海外進出の壁は高く、国内での工場立地の潜在的ニーズはある。企業活動のスピードが上がっているため行政には企業の要望に早く対応できる誘致活動が求められている」と指摘している。

<データ>
 近畿経済産業局がこのほどまとめた今年上半期の工場立地動向調査結果(用地面積1千平方メートル以上)によると、福井県を含む2府5県の立地件数は59件で、前年同期の80件を下回った。滋賀県は前年同期比1件増の10件で、府県別では唯一増加したが、08年(47件)に比べると依然低水準にとどまっている。

<ぷらすα>交通インフラ整備に期待

滋賀県の工場立地の推移

 県は来年度からの4年間で計80件の工場を誘致する計画だ。厳しい景気動向を考えれば現状ペースと同レベルの目標も理解できるが、達成には交通インフラをさらに強化する必要がある。県はETCカード専用のインターチェンジを名神高速(東近江市と愛荘町)と北陸自動車道(長浜市)にそれぞれ開設する予定で、早期の完成に期待したい。甲賀市の工場を取材し、顧客や社員が使うJR草津線の複線化や駅施設の拡充を求める声も聞いた。新規誘致だけではなく、既存工場の流出を防ぐための対策は待ったなしと言える。

【2010.11.14掲載】