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特有の清涼感 独自ブランドに活路

麻織物(湖東地域)
伝統工芸品の近江上布を織る「大西新之助商店」の大西さん。手織り特有のふんわりとした風合いに仕上がる(彦根市・大西新之助商店)

 琵琶湖や愛知川に近く、適度な湿度に恵まれた風土とともに発展を遂げてきた湖東地域の麻織物業の生産額が、輸入品や化繊の普及と不況のあおりで、年々減少している。こうした逆風下、生産者は近江の麻織物を気軽に手にとってもらおうと、独自ブランドを立ち上げたり、産地直売店を開店するなど活路を見いだそうと懸命だ。

 愛知川沿岸では室町時代から麻織物工業が根付き、近江商人が商品を全国に広めて発展させた。麻特有の清涼感のある風合いが特徴だ。

 だが景況は悪く、湖東の繊維業者でつくる湖東地域繊維工業協同組合(東近江市)によると、生産額は1990年前後の400億円をピークに減少。2009年は69億5千万円で前年度比15%減となった。同組合の加盟社もかつては50〜60社あったが、現在は28社にとどまる。

 同組合や滋賀県は「不況に加え、安価な輸入品や化繊の消費拡大が原因」と話す。日本繊維輸入組合(本部・東京)によると、2009年の繊維製品の輸入額は、2兆9096億5900万円で10年前と比べ25%伸びている。

 そうした中、近江の布の魅力を発信しようと、同協同組合は08年、県内で織られた麻織物や製品などを「近江の麻」や「近江ちぢみ」と名付けて地域ブランド化し、比較的安く販売する産地直売店「麻香(あさがお)」を東近江市に出店。昨年には近江八幡市に2号店を開設した。県麻織物工業協同組合も09年、運営する近江上布伝統産業会館(愛荘町)をリニューアルして「麻々(まま)の店」をオープンした。

 個人業者も積極的だ。国の伝統的工芸品に指定されている近江上布を織る大西新之助商店(彦根市)は昨年、オリジナルブランド「新之助上布」を立ち上げた。手間のかかる近江上布の技法に限らない手法で織った麻織物製品の企画、販売までを行っている。

 同店の伝統工芸士大西實さん(63)は「卸業者を通さず、直売することでお客さんに安く提供できる。湖東の麻織物に親しんでもらうきっかけになれば」と、販路拡大を期待する。

<メモ>
 鎌倉時代に始まったともいわれる湖東地域の麻織物は、江戸時代には彦根藩の保護を受けて発展。江戸中期の商品学書「万金産業袋(よろずなりわいぶくろ)」など古文書にも上質な布として紹介されている。国は1977年、「型紙捺染(なせん)」など特定の技法を用いた織物を伝統的工芸品「近江上布」として指定した。

<ぷらすα> 体験教室で魅力発信

近江の麻織物を使った商品が並ぶ産地直売ショップ(愛荘町・近江上布伝統産業会館)
 ひんやりとした手触りと天然素材特有の風合いある質感。近江の麻織物の和装はかつて、庶民の普段着として身近だった。「消費が落ち込み続けている。需要が減少すれば、生産が減って価格が上がり、庶民からますます遠い存在になっていく」と麻織物工業協同組合の担当者は嘆いた。

 組合では、まず麻について知ってもらうのが第一歩だと、織物の体験教室やファッションショーを開いて、PR活動に励む。国内各地の織物業界が不振にあえぐ今、価格を下げる努力だけでなく、各産地がいかに工夫して、特色や魅力を発信していくかが問われていると感じた。

【2011.01.23掲載】