京都新聞TOP > 経済特集アーカイブ > 湖国経済
インデックス

「地産地焼」こだわり 県内林の有効活用にも

ストーブ用まき(野洲市)
一定の長さに切った原木を、まき割り機にかけて割っていく北河さん夫妻(野洲市大篠原)

 11月中旬。琵琶湖の水源になっている森林産のまきを「びわこ薪(まき)」と名付けて生産・販売する「びわこ薪の薪(たきぎ)屋」(野洲市大篠原)では、配達準備に追われていた。自宅で薪ストーブを愛用する社長の北河祥代さん(43)は「冷え込むと新規の問い合わせが増える」と話す。

 県内では、薪ストーブの販売・施工を手掛ける会社や、森林組合などがまきの生産や販売を行っている。まきを購入するのではなく、自ら里山の維持管理の担い手となり、木を伐採して燃料を確保する薪ストーブ愛用者グループもある。一方で、北河さんのように、愛用者がまきの生産を始めるケースも出てきている。

 薪屋では、主に東近江市や日野町内の里山から切り出されたカシやナラ、サクラなど4種類の原木を扱っている。薪ストーブやピザ専門店向けに30、40、50センチの3種類の長さのまきを取りそろえる。「自分でまきを割りたい」というニーズに応じて、原木のままでも販売する。

 スタッフは夫の邦彦さん(43)と2人きり。省力化のために機械化を進める。エンジンが動力のまき割り機を導入。オーストリア製の梱包(こんぽう)機を使って、高さ約1・5メートル、直径1・2メートルの円柱状にまきをネットで固めて乾燥、搬送する。

 創業のきっかけは2007年、邦彦さんが県の事業の共同研究に参加したことだ。県内の広葉樹林を活用したまき供給ビジネスの可能性を探った。県面積の約50%を占める森林を維持管理する人材が不足している。燃料の供給源としての役割が薄れた薪炭(しんたん)林では、伐採されずに老木がそのまま残り、カシノナガキクイムシによるナラ枯れ被害が広がっていた。邦彦さんは営んでいた建設業に見切りを付けた。

 環境に負荷をかけないよう「地産地焼」にこだわる。顧客の6割は県内で、大量販売も自分で配達できる近隣府県に限定。昨年の売り上げは約1200万円だが、原木の購入代や経費を差し引くと利益は多くない。

 増産する設備を整えるために昨年、利子をまきで支払うというユニークな社債を発行した。固定客たちに一口10万円で募ったところ、約50口が集まった。

 固定客の獲得は重要な課題だ。愛用者たちが2年前に立ち上げた薪遊庭(東近江市鯰江町)も、ログハウスメーカーとタイアップしてまきの販路拡大を図る。代表の村山英志さん(47)は信じる。「町と山との間でお金が循環する仕組みができれば、荒れた森が少しでも良くなるはず」

<データ>
 メーカーや施工業者でつくる日本暖炉ストーブ協会(東京都)によると、薪ストーブの販売台数は増加傾向で毎年8000台で推移しているという。広葉樹のまきを使うストーブが一般的。広葉樹より燃焼温度の高い針葉樹をまきにすると故障する恐れがある。針葉樹の放置林の対策で、針葉樹に対応した製品が輸入され、国内でも開発が進んでいる。

<ぷらすα>安定供給待ったなし

まきを乾燥させるには、一定の広さの敷地が必要となる(野洲市大篠原)

 「びわこ薪の薪屋」の敷地内に、出荷を控えた乾燥中のまきがずらりと並ぶ様子は壮観だった。石油ストーブとコストを比較すると1シーズンで約3倍ほどといい、環境に対する意識やライフスタイルにこだわる人々が薪ストーブブームを支えていると感じた。

 東日本大震災の影響が東北地方の林業にも影響が及んだせいか、震災以降、関東や東海地方からの問い合わせもあるという。ナラ枯れ被害の拡大も長期的にまき不足の要因になる。増え続ける薪ストーブ愛用者を支えるまきの安定供給の仕組みづくりは、実は待ったなしの状況なのかもしれない。

【2011.11.27掲載】