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滋賀県酒造組合会長 藤居鐵也さん

地酒で文化見直しを
 ふじい・てつや 甲南大理学部卒。1970年、藤居本家で家業の酒造りを始める。彦根酒造組合理事長を経て2006年、県酒造組合の発足とともに副会長。08年から現職。今年7月、藤居本家の7代目当主に。愛荘町出身。64歳。

 師走を迎え、滋賀県内の酒蔵で新酒の出荷が本格化している。豊かな自然に恵まれた湖国は近畿有数の米どころで、酒造りには定評がある。日本酒の消費量は減少傾向にあるが、県酒造組合の藤居鐵也会長は若者の間で広がる地酒ブームなど変化の兆しを感じている。

 −日本酒市場の現状をどうみるか。
 「お酒の飲み方がスマートになり、出荷量は微減が続いているが、価値の高い地酒への強い支持が底堅さにつながっている。長くビールに押されていたが、近年は若い人たちが地酒を見直し始めた。日本酒が『クール』と言われ、近江の地酒は東京でも評判と聞く。時代が豊かになって選択肢が増え、消費者の好みが成熟してきた。市場が変化し始めた理由は、こだわりの酒造りに取り組む熱心な酒蔵が増えてきたためだ。約20年前から自社ブランドに力を入れる酒蔵が増えてきた。消費者の声を生かした酒造りの成果が出てきた」

 −近江の酒蔵の特徴は。
 「協調性があり、互いに技術なども教え合う気風がある。これが全体の底上げにつながっている。規模が小さな酒蔵が多いが、その分、顧客との接点をつかみやすいのが強みだ。近江の酒はそもそも滋賀の風土を生かして地元のために醸造してきた。今後も大量消費の市場には入らず、個性を出すため創意工夫して商品力に磨きをかける」

 −県内7組合の合併で県酒造組合が発足してから5年がたった。
 「2006年11月の合併時の組合員は50だったが、現在は残念ながら39まで減った。しかし今後も消費者に地酒の良さを伝えることが大きなテーマだと思う。主な事業では、近江の地酒を発信するため07年に始めた『滋賀地酒の祭典』は今年で5回目を迎えた。県内外から毎年2千人が訪れるようになり、定着してきた。多くの酒蔵で一般見学も受け付けている。酒蔵の姿勢が分かれば味わいも変わるとあって人気を集めている」

 −具体的な取り組みは。
 「県内で消費される日本酒のうち地酒のシェアは30%程度で、まだまだ開拓の余地がある。来年からはあらためて地酒で乾杯をしてもらう運動に取り組みたい。とくに公式な宴会などではぜひ地酒を使ってほしい。酒の消費が伸びれば酒米の生産量も増え、地域の景観や環境の保全にも役立つ。何より2千年以上も前から伝わる日本酒は日本の文化遺産で、米を中心とする食文化の柱でもある。グローバル化が進む今こそ、日本酒で乾杯し、日本の文化を見つめ直してほしい」

【2011.12.11掲載】